携帯ゲーム機が家庭内でも普及すれば、ゲーム内広告も空振りに終わる?
2007年03月02日
最近電車内でも携帯ゲーム機をいじっている人間を見ることが珍しくなくなりました。彼ら(彼女ら)は、いったいどんなゲームに興じているのでしょうか? 日経産業新聞とインフォプラントが実施した「ネット1000人調査」によれば、携帯ゲーム機で最も楽しまれているソフトはパズルやクイズ、脳のトレーニング等の「知的ゲーム」だということです。情報源は、『知的ゲーム「TV見ず居間で」』(日経産業新聞 2007年3月2日 1面)です。
さらに、ゲームソフトを利用して漢字検定や外国語学習などに取り組む人も、かなりの数いることもわかります。
もはや携帯ゲーム機は、かつてのような娯楽や暇つぶしという枠を超えて、ビジネスパーソンが通勤時の隙間時間を利用して取り組む「自己啓発ツール」の1つと考えることも可能なのかもしれません。
元々持ち運びができるようにと開発されたのが携帯ゲーム機なので、自宅ではこの種のゲーム機に対する需要は少ないと考えるのが普通でしょう。しかし、携帯ゲーム機を使用する場所を尋ねた設問では、意外な結果が返ってきました。
最も多いのは「自宅の居間・リビング」で66.4%。「自分の部屋」の54.9%を上回る。通勤・通学途上などは10%未満と意外に低かった。
それを象徴してか、携帯型ゲーム機を利用し始めて時間の使い方が減ったものを挙げてもらうと、テレビや据え置き型ゲーム機が上位に並んだ。従来型の「居間型エンターテインメント」が割を食った格好だ。テレビを見ずに、ソファで“知的作業”にいそしむ消費者が今後も増殖し続けるか。
携帯ゲーム機の普及が、テレビを見る時間や据え置き型ゲーム機を使う時間を奪っているという結果に、広告業界関係者は衝撃を受けているのではないでしょうか? ネットの普及によりテレビの視聴時間が減ったことにより、テレビ広告の影響力は相対的に低下する傾向にあります。
こうしたテレビ広告での減収を補おうと、広告業界関係者が将来の有力な広告手法として期待しているのが、ゲーム内の看板に企業名を入れたり、商品を登場させる「ゲーム内広告」です。(商品、看板…拡大する「ゲーム内広告」 オンライン化が後押し)。ゲーム内広告に注目しているのは広告代理店だけではありません。あのグーグルがゲーム内広告会社を買収するという噂も流れています。
現在ゲーム内広告の対象と想定されているのは、据え置き型ゲーム機用のソフトやオンラインゲームです。ところが、日本のユーザがテレビや据え置きゲーム機代わりに使用時間を増やしている携帯ゲーム機用のソフトの方は、広告メディアとしては不適当だと考えられます。
日本のユーザが好む脳トレ、パズル等の知的ソフトや、自己啓発型の学習ソフトには、集中して真剣に取り組むべき種類のゲームソフトです。この種のソフトの中に広告を入れることは、おそらくユーザから敬遠されることでしょう。もし、携帯ゲーム機が家庭内の据え置ゲーム機を駆逐するようなことでも起これば、関係者が目論むほどには、ゲーム内広告市場は拡大しないのではないでしょうか。
ところで「あるある騒動」以来、科学的な裏付けのない主張を疑問を投げかける声が高まっています。最近広まりつつあるニセ科学批判の一環、と考えもいいでしょう。脳研究:「ゲーム脳」、「脳トレ」 どっちがホント?では、ゲームの脳へ及ぼす影響についての諸説を紹介しています。
ゲームは認知症に似た症状を引き起こし、前頭前野の機能を阻害するという「ゲーム脳」仮説を主張するのが、日本大学の森昭雄教授です。一方、単純計算や音読が前頭前野を活性化させ、認知機能を改善する効果があると考えるのが、東北大加齢医学研究所の川島隆太教授です。川島教授の理論をゲームソフトに応用して、1000万本以上の大ヒットとなったのが、任天堂の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」です。しかし、過熱化する「脳トレ」ブームに警鐘を鳴らす専門家も存在します。
日本神経科学学会会長の津本忠治・理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダーは「川島氏の研究は科学的な手続きを踏んでいるが、認知機能の改善が本当に学習療法だけによるかはさらなる研究が必要だ。『改善した』という部分だけが拡大解釈され広がることで、計算さえやれば認知症にならないと思い込む人が出てくるかもしれない」と話す。
科学的には「脳トレ」がボケ防止になるとは、言い切れないのでしょう。
川島教授は「(脳トレは)脳研究の重要性を理解してもらうための社会貢献の結果。もちろん、ここまできてウソだったら科学者の資格はないと覚悟しているが、社会への出方を完全に制御はできない」と話す。
こうした川島氏の活躍もあって近年急速に脚光浴びるようになった脳科学の分野です。しかし、まだまだ科学的根拠のない俗説がまかり通っているのが、脳科学の問題でもあります。
脳に関する仮説が性急に応用される傾向は各国にあり、「神経神話」と呼ばれる。OECD(経済協力開発機構)教育研究革新センターは01年の報告書で神経神話を取り上げ、教育者、マスコミ、政策立案者、企業の勇み足をけん制した。
「脳研究はしばしば間違って解釈・簡略化される」「大衆紙は研究の報告を単純化しすぎる」--。報告書は日本でも根強い「右脳教育」「早期教育」「3歳までは豊かな環境で」という三つの神話を挙げて「やっても問題ないが、科学的根拠はない」と結論づけた。
議論に参加した小泉英明・日立製作所フェロー(分析科学)は、光を使った脳計測の第一人者で、国のプロジェクト「脳科学と社会」の研究総括も務める。「脳のように身近な問題には社会の関心が高い。しかし、今の脳科学は、社会の関心に十分応えられる段階に達していない」と指摘する。
神経神話にしろ、血液型性格判断にしろ、もっともらしい部分は少しはあるものです。だからこそ、これもタネにしたビジネスも流行るわけです。ブームに乗るのも結構ですが、それもほどほどにということでしょう。ブームが去れば、電車の中で使われるゲームソフトの顔ぶれも様変わりするのでしょうか?
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