デルのリナックス版製品の発売は顧客主義復活を示す重要な試金石
2007年03月16日
デルのCEOに創業者のマイケル・デルが復帰しました。まず手をつけたのが外部の人材を迎え入れての経営陣の大幅な刷新です。(起死回生なるか--外部の人材登用に賭けるM・デルCEO)。急激にトップ陣の入れ替えが起これば、従業員は動揺するものです。そうした動揺の広がりを防ぐために、全世界の従業員に宛てたメモの冒頭で、こう述べています。
We held a meeting this morning with our Vice Presidents and Directors. I'd like to share the highlights of this meeting with all of you.
I told our team that I remember the great times and many successes with Kevin Rollins, but now it's time for a change. We are not doing a COO or CEO search. I plan to be CEO for the next several years.
CEOやCEOを外部から招聘するつもりのないこと、数年間は自分がCEOとして留まることを表明しています。マイケル・デル本人が改革の陣頭指揮を執る、との強い決意の表れと考えられます。従業員向けのメッセージには、デルが解決すべき課題がまとめられています。
To summarize, we will differentiate with CE (customer experience); deliver value, but go beyond this with our unique understanding of customers; move to Solutions and Services; use database marketing and targeting for smaller customers; leverage our unique supply chain; regain our cost position; and build some new sources of sustainable profit including using intellectual property to differentiate.
この中で強調されているのが、顧客ニーズの理解です。この目標に向けて2月16日に、顧客が要望やアイデアを直接書き込めるWeb2.0型のサイトIdea Stormを開設しました。
Idea Storm で得た意見を分析した結果、デルはリナックス版のPCの発売を真剣に考え始めました。情報源は、『リナックスPC参入、デル「真の顧客主義」に?――ネットで生の声聞く』(日経産業新聞 2007年3月15日 28面)です。
デルのホームページに13日、消費者に6つの質問項目をきく電子アンケートが掲載された。
リナックス搭載を希望するパソコンはノート型かデスクトップ型か、主に何に使うのか、どんな技術支援サービスを求めるかなどを尋ねる内容だ。23日に回答を締め切り、その結果をもとに数週間かけて商品の仕様や販売計画をまとめ、公表するとみられる。
発端は2月16日にデルが開設した「アイデアストーム」というウェブサイトだ。自社製品についての要望を消費者が自由にかき込み、他の人がそれらの意見に賛成票を投じる仕組み。インターネットを使って市場ニーズを吸い上げ、商品力アップにつなげようとの思惑で始めた。
「(リナックスのような)オープンソースソフトを使えばパソコンの値段は劇的に下がる」「ウィンドウズ以外の選択肢が欲しい」。サイト開設直後から殺到したのが、リナックス搭載パソコン発売を求める声だった。13日時点で11万票に達し、断トツ1位の支持を集める意見だ。
2月末の段階では、デルはリナックス搭載製品に対する要望の多さは認めたものの、プリインストール版の発売を明言するには至りませんでした。(デル、Linuxに前向きな姿勢--ユーザーフォーラムから強い要望)。消費者の意見を聞いても、中途半端な対応で済ませてしまえば、かえって消費者の反発を招くことになります。そうしたリスクも考えて、今回ユーザ調査に本格的に取り組むことにしたのではないでしょうか。
Idea Stormに寄せられた意見の中には、「海外にアウトソースしているコールセンターを米国内に設置すべき」「環境問題にもっと積極的に取り組め」といったように、単にPCの仕様に関する要望を超えたものもあります。この種のサイトにありがちな悪戯半分の意見は少なく、多くの賛同の受けた意見のほとんどは真剣な内容です。
集まった意見の中から、デルが具体的にアクションを取り始めたアイデアについては、IDEAS IN ACTIONで取りあげられています。寄せられた数に比較すれば、実現されるアイデアの数はかなり少なくなりそうです。繰り返しになりますが、デルの変革を期待して寄せられた意見が真剣であれば、もしそれに応えられない場合は、逆に消費者の失望も大きくなります。
PCのコモディティ化を加速することによって成功したのが、デルのビジネスモデルです。コモディティの代表であるデル・ブランドに対して、ユーザが強い愛着を持っているとは考えられません。この点は、根強いファンを抱えていたアップルのCEOに復帰したジョブズの場合とは、状況が決定的に違います。
Idea Stormの書き込みには、現在のデルのビジネスモデルを否定する内容も見られます。デルのビジネスモデルを否定する改革を実現できるのは、そのモデルを築いた当人であるマイケル・デルしかいません。創業者がCEOに復帰してもなお、改革に成功できなければ、デルの未来はありません。
マイケル・デルは数年間はCEOに留まる決意を述べていますが、消費者はそんなに長い間デルが変わるのを待ってくれるわけではありません。デルには、わかりやすい形で消費者の要望に応える姿を、見せる必要があります。その試金石の第一弾として、リナックス搭載製品販売の持つ意味は、決して小さくないはずです。
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