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カネボウ上場維持を切望した産業再生機構の斉藤惇氏が東証社長に就任

2007年03月27日

東京証券取引所の次期社長に斉藤惇・産業再生機構元社長が、大方の予想通りに内定しました。東証社長就任の噂が取り沙汰されていることについては、「今は真っ白。これから庭仕事でもしたい」と煙に巻く発言をしていました(『4年ぶりに民間人に戻る』 週刊東洋経済 2007年3月31日号 22ページ)。しかし、腹の内はとうの昔に決まっていたのでしょう。情報源は、東証社長に斉藤氏 野村証券出身 再生機構で手腕です。

東京証券取引所の新社長に、野村証券出身で産業再生機構社長を務めた斉藤惇(あつし)氏(67)が就任することが26日、固まった。複数の関係者が明らかにした。西室泰三社長兼会長(71)は会長職に専念する見通し。27日の指名報酬委員会と取締役会で内定し、同日発表する。6月の株主総会後の取締役会を経て就任する予定。斉藤氏は今年秋の東証の持ち株会社移行に伴い、傘下に設立される運営会社のトップも兼務する方向で調整する。

斉藤氏は、野村証券の副社長などを経て平成15年4月、経営不振企業の再生のために創設された産業再生機構(3月15日解散)の社長に就任し、ダイエー再建などに手腕を発揮した。

70歳を超える西室氏から若返りが図られたとは言え、斉藤氏も67歳です。年齢からすれば、本当に「庭仕事」でもやっていただくのが相応しいようにも思えます。逆に考えれば、それだけ斉藤氏が余人を持って代え難い人物だということでしょうね。

斉藤氏を社長に迎える発表は予想通りでしたが、同じ東証の日興コーディアルグループの上場維持決定の発表を、予想外と思った人は少なくないでしょう。実際に、政界裏工作が働いた結果という見方もあったりします(やっぱりあった!? 日興 上場維持政界工作)。

噂の真偽はともかく、東証内部でも最後まで決めかねていたことは事実のようです。 上場維持決定に至る舞台裏が、日経ビジネスに掲載されています。情報源は、『「日本の資本市場が笑われる』(日経ビジネス 2007年3月19日号 6ページ)です。

3月12日、東京証券取引所は日興コーディアルグループの上場維持を決めた。東証の西室泰三社長は、「(決定を下した臨時の執行役員会において)特に異論は出なかった」と会見で説明した。

しかし、その週までは上場廃止か維持か、東証内部でも大きな議論になっていた。結局、前週末に、「この土曜日、日曜日で一休みして頭をクリアにして考えましょう」という西室社長の一言で水入りとなる。週末の2日間を置いて、結論は上場維持へと落ち着いた。

昨年12月に不正会計がクローズアップされて以降、証券関係者に日興上場の帰趨を問うとこんな言葉が返ってくることが多かった。真相を究明するために日興が設置した特別調査委員会の報告書でも、「一連の行為は意図を共有する関係者によって組織的に進められたものであると考える」と結論づけられていた。

それに対し、東証の判断は上場維持となった。米シティグループによるTOB(株式公開買い付け)が決まるなど、上場廃止への流れが強まっていたこともあって、今回の決定に違和感を覚えた市場関係者は少なくない。

上場維持の背景として東証が意識したのは株式市場の安定だ。西室社長は「厳しさは必要だが、市場に混乱があってもいけない」と言う。仮に日興を上場廃止にすれば、同様に不正会計が取りざたされている三洋電機の上場も危うくなるとの観測があった。日興、三洋を合わせて約35万人の株主がいる主力銘柄が相次いで上場廃止になれば、市場が揺らぐ恐れがないとは言えない。

同じ東証が2005年5月に上場廃止決定を下したのがカネボウです。当時のカネボウは、産業再生機構の下で再建がスタートして1年が経過していました。産業再生機構を社長として率いていた斉藤氏は、当然ながら上場維持を切望していました。

カネボウの上場廃止決定の舞台裏についても不思議なことに、これまた見てきたようなドキュメントがあります。 情報源は、『カネボウ上場廃止ドキュメント――東証「市場の信頼」選択』(日経金融新聞 2005年5月13日 1面)です。

カネボウ関係者によれば同社の経営陣はこの時期、「過去との決別を明確にすれば上場は維持されるのではないか」と期待していたという。すでに経営陣も刷新されており、産業再生機構という「官」の後ろ盾もあったからだ。

カネボウの期待を後押しするように、再生機構も同日、東証にカネボウの上場維持を要望。「今のカネボウは適切な情報開示をしている」「11万人を超える株主を守らなくて良いのか」。再生機構から届いた声は、東証にも響いた。

「西武鉄道を上場廃止にした時よりも高度な判断が必要になる」。そう判断した東証首脳は、上場廃止・維持の両面から慎重に検討するよう事務方に指示した。

大型連休前の4月28日。カネボウは訂正有価証券報告書の承認を受けるため、臨時株主総会を開いた。総会では旧経営陣の責任追及に混じり「何とか上場維持を」と求める個人の声が多かった。「東証の人もこの声をもっと聞いて欲しい」。カネボウ首脳は総会の後、こうつぶやいた。

4月下旬、産業再生機構の斉藤惇社長は野村資本市場研究所の大崎貞和研究主幹と、カネボウの上場問題について議論した。「カネボウの上場維持を認めると、市場全体への信頼が損なわれる」。大崎氏は野村OBでもある斉藤氏に、こう直言した。投資家の損害を最小限に抑えるため、野村が中心となりカネボウ株の値付け業務をするアイデアも披露した。

大崎氏は議論に先立ち、「カネボウを上場廃止すべき」と結論づけたメモも社内に回している。特段の反論はなし。「これが市場のまっとうな見方だと思いますよ」。大崎氏は、斉藤氏が市場の声にもっと耳を傾けることを期待した。

大型連休の谷間の5月2日。カネボウは訂正有価証券報告書を関東財務局に提出した。同報告書は東証にも回り、上場維持・廃止の検討が正式に始まった。

東証の鶴島琢夫社長と、上場部門担当の長友英資常務は、連休中も自宅で待機。電話で事務方に検討を急ぐよう指示を繰り返した。東証ナンバー2の吉野貞雄専務が6日夜、海外出張から帰国。そろそろ決断の時期だ――。首脳陣がそろったことで、東証内の雰囲気が一気に固くなった。

鶴島、吉野、長友の三氏は対外的には「まだ白紙」、「五分五分だ」と繰り返しつつ、事務方の資料を何度も読み返し、徐々に一つの考え方に傾いていった。「再生機構が支援している企業でも、これほどの粉飾を許すほど特別な扱いはできない」。

連休明け、5月9日の執行役員会。「カネボウの廃止はやむをえない」「東証の規定から維持を説明できない」。事務方から何人もの法律家の見解が披露され、これまでの調査結果も報告される。「やはり上場廃止に持ち込むべきだろう」。役員間で最終的な意思疎通が図られる。

9日にカネボウから最後のヒアリングを行い、その足で東証幹部が金融庁へ。廃止の方向性をにじませたうえで、「取締役会の予定が入っている木曜には決めたい」と、金融庁の意見を探ろうとした。

金融庁は「東証の自主的な判断」と最後まで中立姿勢を貫いた。最後まで気になっていた金融庁の動きがないことを確認し、東証は12日発表に向け準備を加速した。

こうして斉藤氏が社長を務める再生機構の願いも空しく、カネボウは上場廃止となりました。このカネボウの件がきっかけで、東証の上場廃止基準の見直しが行われたことになっていますが、実際にはどうなのでしょうか? 日興の上場維持決定に至る経緯を見る限りは、前日まで右往左往している感じで、スッキリした基準ができているようには到底思えません。

時としてダブルスタンダードにも見える東証の上場廃止基準について、現在の斉藤氏はどう思っているのでしょうか? 東証社長就任時の記者会見では、この点について鋭い質問が浴びせられることに期待します。


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