疲れたサラリーマンが集う専門職大学院は現実逃避の「癒やしの場」?
2007年04月13日
春はスタートのシーズンです。青雲の志を抱いて大学院生活をスタートされた人も多いはずです。しかし、最近は希望する就職先がなかったので、とりあえず勉強を継続することを選ぶモラトリアム型院生も少なくありません。また、新卒で就職した会社を辞めて、MBA、MOT、法科大学院、会計大学院らの専門職大学院を修了することで、キャリアチェンジを図ろうと考えるビジネスマン・ウーマンも増えつつあります。
そうした社会人大学院の現状について、今週発売の週刊東洋経済に面白い記事がありました。情報源は、『社会人大学院に「入院」する人々』(週刊東洋経済 2007年4月14日 80~81ページ)です。
今、大学院に通う社会人が増えている。引き金となったのは、1991年の大学審議会の答申だった。
優秀な研究者を増やすと同時に、「社会の多様な方面で活躍しうる人材」を養成するため、が建前上の目的だ。各大学院が競うように定員を増やし、10年後の2000年には院生が倍増。修士・博士課程を合わせて20万人超に膨れ上がった。
リクルートワークス研究所の濱中淳子研究員は、大学院拡大の本音は供給側の台所事情にあったと語る。
「18歳人口の減少を目の当たりにして、学生を確保したい大学と権益を守りたい文科省の思惑が一致したというのが実情でしょう」
思惑どおりに学生は確保できた。しかし、企業は特に文系の大学院生への冷たい視線を変えなかった。就職活動経験者にとって「院卒は不利」は常識だ。大学の教員ポストも増えるわけではない。
需要を無視した拡大路線は大学院生を直撃し、研究者にもなれず企業に就職もできない院卒者が大量発生。会社を辞めて大学院で学んだ末、塾講師などのバイトで糊口をしのぐ「院卒フリーター」になった人も珍しくない。
大学院を卒業さえすれば明るい未来が開ける、というのは幻想です。場合によっては、「キャリア上の空白期間」と見なされるような危険性もはらんでいるようです。 それでは、こうした現状を当の社会人大学院生はどう考えているのでしょうか?
現段階では会社を辞めて大学院に通う選択は、ハイリスク・ローリターンと言わざるをえない。
「そんなことは多くの学生たちは百も承知ですよ」
都内のコンサルティング会社勤務の藤村友彦さん(仮名、32)が意外な反論をしてくれた。彼は3年前に会社を休職し、一橋大学のMBAコースに2年間通った経験がある。
「キャリアアップの夢を抱いて国内のビジネススクールに入る人は全学生の半分もいないと思いますよ。僕も含めて、多くの人は『癒やし』を求めているんです」
以下が藤村さんが本音で語るMBA入学の理由です。
新卒で現在の会社に就職し、5年間がむしゃらに働いてきた。転職するほどの不満はないが、「このままでいいのか」「俺は会社の外では通用しないんじゃないか」という不安が募っていた。ビジネススクールを受験する直前には、行き詰まりと疲労感がピークに達していたという。
「あのまま働き続けていたらうつ病になっていたかもしれません。僕のほかにも、厳しい会社生活で心に傷を負った学生は少なくないです」
休職してビジネススクールに行ったことで、会社の人事評価はマイナスになったと認める。
「東南アジアを2年間放浪したわけではないので、クビにはなりませんでしたけどね」。藤村さんは明るい表情で笑う。いったん職場を離れたことで、会社のよい面にも気づけたという。海外留学経験者が日本好きになるのと似ている。
夢も希望もない話ですが、これが社会人大学院生の実態の一部を表していることは事実かもしれません。
なお、記事の中には、40歳を過ぎてから東京理科大のMOT専門職大学院を第1期生として卒業したフリーライター山田久美さん(48)の事例も紹介されています。技術戦略を専門とするフリーライターの仕事を進める中で、自信を持って書ける専門分野がないことに不安を覚え、体系的に知識を習得したい考えたのが、山田氏の入学の動機です。選んだのは、1年間で修士課程が修了するフルタイムコースでした。
山田さんの場合、想像以上に大変な1年間で得たものも大きかった。
膨大な書籍を読み、各技術分野出身の学生たちと議論を繰り返したことで、技術経営に関する基礎的な知識がしっかりと頭に入り、本音で語り合える人脈もできた。今、この分野ならば自信を持って原稿を書ける。
実際に、MOT取得前よりも仕事の依頼が増えた。学校通いで稼げなかった機会損失分と授業料は、数年後には取り返せる見通しだという。
陳腐な結論になりますが、社会人大学院も目的意識がハッキリしていていて、現在のキャリアに密接に関係した分野であれば、得ることも大きいということでしょう。また、元々組織に属していないフリーランスの人間にとっては、大学院で人脈を構築するという面でも、成果があるはずです。
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