マネジャータイプを輩出する「IBM学校」とリーダータイプの「リクルート学校」
2007年04月17日
理想の上司として求められるのは、リーダータイプなのかマネジャータイプなのか? マネジメント力に優れたリーダー、指導力に優れたマネジャーという言い方もあるので、どちらでも大きな違いがないように思えますが、経営学では両者の機能は明確に区別されています。神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は、2つの機能の違いを次のように説明しています。情報源は、『企業にも個人にも不可欠なリーダーとマネジャーの両立』(週刊ダイヤモンド 2007年4月21日号 54~56ページ)です
リーダー機能は、上司である自分の描く絵(事業計画)に、部下を共鳴させてついてこさせるもの。マネジャー機能は、会社の一部門(部や課、グループなど)に課せられた業績目標を、部下それぞれに分担あるいは共同で達成させるようにコントロールするものだ。どちらも必要かつ重要だ。
さらに金井教授は、リーダーとマネジャーの違いを説明するために、興味深い調査を行っています。管理職の人たちに、自分がこれまで出会った人の中から、「リーダータイプで、すごいと思った人」と「同じくらいよくできる人だがマネジャータイプだと思った人」を、具体的な人物像として描写させる実験です。結果を見ると、リーダーとマネジャーの違いは、周囲の人間にハッキリと認識されていることがわかります。
| すごいリーダー | できるマネジャー |
|---|---|
| 感性、感情、直感(右脳) | 理性、データ、分析(左脳) |
| 熱くビジョンを語る | クールでテクノクラート風 |
| 強烈な価値観を持っていて、それを押し通す。カリスマ | 冷静さ、客観性を重視し、計数管理がうまくできる |
| 人間くささ、人間的魅力で人を引っ張る | システム(仕組み)を使う |
| 人間学や人間的愛情を重んじる | 論理学やルールを重んじる |
| 自分のフィロソフィーを守る | ルールを遵守する |
| この人についていきたいと思わせる。持って生まれた人間性が鍵なので、余人をもって代えがたい | 誰がやってもうまくできる仕組みをつくって、他の人(後継者)が効率よく仕事をやっていけるようにする |
| 大きな絵やビジョンを考え、それを追い求める。バランスがあるというよりは、時に偏っているぐらい特徴のある発想を持つ | バランス感覚に優れている |
| しかし、多少とも抜けがあり、はらはらさせる | しかし、どこか特別に際立っているところが必ずしもあるわけではない |
| でも、その絵やビジョンがはずれではなく、人に熱くアピールするときには、周りもついつい応援してしまう | でも、抜けがなく安定力がある。平均以上にすべてがよくできる |
| 危機的状況で迫力を出す | 危機的状況を予防したり回避したりする |
| 偶発的な世界に対処できる | 必然性の世界に生きる |
| なにかを壊す、変化させる | なにかを守る |
| 枠組みを創り出すか壊す | すでにある枠組みを大いに利用する |
| 攻撃的で妥協しない | 調和、配慮 |
| 自分でぐいぐい前進する | 人の割り振りを行なう |
表を見ると、マネジャーの特徴を示すキーワードは、システム(仕組み)、合理的・論理的なルール、クールで冷静となる。
これに対して、リーダーの特徴は、人間的魅力、熱いビジョンと感情、(多少抜けたところがあって緻密でなくても)ハラハラドキドキさせてくれる点にある。
こうして比較して見ると、リーダータイプを表すキーワードの方が実務家風のマネジャータイプのそれよりも、はるかに魅力的に見えてきます。カリスマ・リーダーに付き従うことはよしとしても、計算高いマネジャーに管理されるのは潔しとはしない、といった深層心理の表れでしょうか?
不朽のビジネス書と呼ばれる『ビジョナリー・カンパニー』の著者、ジェリー・ボラスの最新刊『ビジョナリー・ピープル』が、この4月に発売されました。本書は、世界各国、200人以上の著名人を対象に10年間にわたるインタビューを実施した結果、共通する成功者の条件をまとめたものです。
本書の刊行に合わせて出版社の英治出版は、「ビジョナリー・ピープル」と呼ぶに相応しい21名とその書籍を選びました(ビジョナリー・ピープルになるための21冊)。その顔ぶれを見ても、どれもリーダータイプの人物ばかりで、マネジメントタイプに近いのは、野村克也とジャック・ウェルチぐらいのものでしょう。ことほどさように、リーダータイプへの憧憬の強さは、マネジメントタイプの比ではありません。
しかし、ビジネスマンのすべてがカリスマ・リーダーになれるわけではありません。実際の企業経営で必要とされているのは、むしろマネジメントタイプの人材でしょう。 そうした人材を輩出している企業が、日本IBMです。情報源は、『「IBM学校」育ち今も活躍――転職組、多方面で才能を発揮』(日本経済新聞 2007年4月16日 19面)です。
世界に通じるビジネスマンを多数輩出し、「IBM学校」の異名を取った日本アイ・ビー・エム。グローバル化の流れで米国本社の支配力が高まり、社員が小粒になったといわれる。その半面、外資系IT(情報技術)企業トップというパターンでなく、様々な分野で活躍するIBM出身者も増えている。
「部下の中では寡黙な男でしたが……」とライブドア裁判のニュースを見た日本IBMの技術顧問、冨永章(61)は語る。ライブドア事件では電子メールの解読が真相究明の鍵を握ったが、裁判を担当した東京地裁判事の一人、松田道別(42)は、なんとIBMの元SE(システムエンジニア)だった。
早大政経学部卒で、銀行システムの開発で才能を発揮。「司法試験を受けたいというので了解したら、アッという間に合格した」と言う。傍聴者のメモでも法廷で松田がメールについて鋭く追及する様子がわかる。
冨永自身も異色の存在だ。事業行程を管理する「プロジェクトマネジメント」を学問にすべきだと説き、在職中に学会を設立。現在は東京大学や法政大学で教える。「IBMの卒業生が外で活躍できるのは、経営や営業の方法を徹底的に仕込まれたから」だと強調する。
マネジメントタイプの人材育成を得意とするIBMが、雇われ社長の供給源であるとすれば、独自の企業風土でリーダー型創業社長を輩出してきたのが「リクルート学校」です。現在、リクルートやリクルートコスモス出身者が社長を務める上場企業は、20社近くに上っています。
改めてIBM出身者とリクルート出身者の顔ぶれを比較すると、後者の方が魅力的な人物に見えてしまうことは否定できません。やはり、人はカリスマ型リーダーに憧れるものなのでしょうか?
なお、リクルートの創業者の江副浩正氏が、自らその強さの秘密である「社員皆経営者主義」を解き明かしたのが『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』です。「すごいリーダー」を志す人だけでなく、「できるマネジャー」を目指す人にも、役に立つことが書かれているはずです。
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