数字に強くなりたければ「誤差の2割3割当たり前の精神」で挑戦すべし
2007年04月19日
先週発行の週刊東洋経済には、「数の極意&学習法27」と題して、数字の苦手意識を克服するためのいろいろな方法に関する特集記事がありました(週刊東洋経済 2007年4月14日号 38~83ページ)。記事の中で数字に強い経営者として挙げられていたのが、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長、京セラの稲盛和夫名誉会長、ソフトバンクの孫正義社長です。3氏が実践する経営へのデータの活用法が紹介されています。
ビジネスにも活用できる実践テクニックとしては、「失敗学」の権威の畑村洋太郎・工学院大学教授が、「数感覚」が冴える畑村式トレーニングを紹介しています。畑村教授の提唱するトレーニングは、次の5つの法則がベースになっています。
データがないと考えられない→法則1 数はその場で作る!
数は正確でなければならない→法則2 倍・半分の誤差は許される!
何でもパソコンで計算する→法則3 自分のアタマで計算する!
数は合計が大事→法則4 何でも1人当たりで見る!
数は「量」で見る→法則5 数の「質」も見る!
野口悠紀雄・早稲田大学教授も、ケインズの言葉「正確に間違えるよりも、漠然と正しくありたい」を引用して、多少の誤差をおそれずにドンブリ勘定に挑戦することの重要性を説きつつ、経済を理解するのに必要な基本データの計算方法を紹介しています。その一例として挙げられているのが都道府県の人口数です。
人口の「相場観」を持っておくのも重要なことです。日本全体の人口が1億3000万人。都道府県の数を約50とすれば、1県当たりは全人口の2%ぐらいですが、東京都など大きな都道府県もあるので、実際はもっと低くて、大体1%と思えばいい。
そうすると、3大都市圏以外の県だと、人口は大きくて約150万人、小さいところで約100万人です。そのうち、県庁所在地の規模が大体約3分の1と考える。つまり、日本のごく一般的な県庁所在地の人口は約30万人ということです。
私は講演に行ったときに、この県の人口はこのくらいでしょうとよく言うんですが、誤差はせいぜい2~3割です。平均に比べて大きいか、小さいかという判断で大体わかるわけです。
さすが野口先生、非常にわかりやすい説明です。県の人口は「だいたい100万人~150万人」と覚えればよいとは、まさに「目から鱗」という感じです。
タイミングよく4月16日に、総務省から2006年10月1日現在の推定人口が発表されたばかりです。できたてほやほやの都道府県別人口(PDF)で、野口先生の教えを確かめてみることにしました。
平成18年10月1日現在の都道府県別の人口は,東京都が1265万9千人と最も多く,次いで神奈川県(883万人),大阪府(881万5千人),愛知県(730万8千人),埼玉県(707万1千人)となっている。以下,人口600万人台が1県,500万人台が3道県,300万人台が1県,200万人台が10府県,100万人台が20県,100万人未満が7県となっている。
人口順位を前年と比べると,神奈川県が大阪府を上回って第2位となったほか,岩手県と滋賀県の順位が入れ替わった。上位5都府県の順位が変わったのは,埼玉県が北海道を上回り第6位から第5位となった昭和58年以来,23年ぶりのことである。
なお,東京都,神奈川県,大阪府,愛知県及び埼玉県の上位5都府県の人口で全国人口の35.0%を占めている。
最新のデータでは、200万人以上が20県、100万人以上が20県、100万人未満が7県ということで、「だいたい100万人~150万人」とはちょっと違うような感じがします。そこでデータをさらに詳しく見ることにしました。
実際に「100万人~150万人」の範囲に収まっているのは、25位の山口県から40位の香川県までの、16県しかありません。どうも野口式には説得力に欠けるようです。相手が誤差を許してくれるのも野口先生クラスの大物だけであって、本当に無名の人間でも通用するテクニックなのか、という疑念も湧いてきます。
しかし、こうした心配そのものが小人の発想です。大事なのは誤差をおそれずに自分で数字を導き出すという姿勢です。誤差に関しては、野口先生は「2割、3割当たり前」、畑村先生に至っては、「倍・半分」の誤差は許される!」とまで言い切っています。大物を目指すのであれば、その大胆さも見習いましょう。
そうは言っても、両教授とも「ケタ違いの間違いははダメ」という点では一致しています。人口の場合を例にすれば、さすがに県民100万人のところを、10万人や1,000万人とまで間違える人はいないんじゃないかと思いますが.....。数字に弱い若者が増えた現代では、こんな大間違いが起こっているのかもしれません。
そこで勇気をもって私もドンブリ勘定に挑戦してみることにします。引き続き日本の総人口を題材にします。少し視点を変えて、年齢別の人口構成に注目しました。情報源は、昭和生まれ、初めて1億人割る 06年推計人口です。
昭和生まれは9997万5000人で、1984(昭和59)年に1億人に達して以降、初めて1億人を割り込んだ。一方、平成生まれは2081万7000人で、初めて2000万人を超えた。
昭和生まれが初めて1億人を割り込んだということは、現在19歳以上の人口が1億人より少なくなったということです。そこで、この19歳を基準として何かネタをひねり出すことにします。18歳や20歳は、いろいろな権利の制限年齢として使われていますが、その間の19歳となると、なかなかうまい適用事例が見つけられません。
私が知っているのは、サッカーくじ「toto」(トト)の購入可能年齢が19歳以上、ということぐらいです。サッカーくじの新顔「BIG」は、通常の1等賞金3億円が、キャリーオーバーが発生すると6億円にもなることが魅力です。購入者が少ないためでしょうか、実際にキャリーオーバーはたびたび発生しています。
9歳以上の人間しか「BIG」は買えないので、6億円をゲットするチャンスのある人間は、日本全国で1億人もいない、ということになります。「BIG」は、Jリーグの全14試合のホームチームの勝ち・負け・その他の3種類を予想する一口300円のくじです。勝敗予想はくじ購入時にコンピュータが決定するので、購入者のサッカー知識の有無は全く関係ありません。
14試合の結果のパターンは、理論上 4,782,969通りあります(14^3)。計算を簡単にするために、5百万通りとします。したがって、1等当選の確率はその逆数の 1/5百万 となります。これに賞金の6億円をかけると、くじ一口当たりの期待値が求められます。
6億円 x 1/5百万 = 120円
300円くじ一枚の期待値が120円しかないので、理論的には割の合わない投資です。しかし、そもそもギャンブルが割の合わないことは誰でも知っているので、「toto」が売れていないのは別の原因があると考えるべきでしょう。一番の問題は、どこで売っているのかよくわからない、事前の会員登録が面倒といった運用上の問題のせいだと考えられます。
サッカーくじは、スポーツ振興の名の下に文部科学省が管轄する団体が運営しています。6億円という高額配当で射幸心を煽るようなものを、文科省が手がけることへの疑問もあります。手軽に購入できないようにしている背景には、運用を緩和して批判を増やしたくないといった文科省の考えがあるのでしょうか? こうしたジレンマを抱えるサッカーくじの収支は、赤字が続いています。
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