転職力が身につく会社ソニー出身者のその後の人生いろいろ
2007年04月30日
週刊東洋経済(2007年4月28日号 138~143ページ)に、会社選びの専門家3名による座談会『就職してはいけない会社 会社選びのプロに聞く!』が掲載されました。登場している会社選びの専門家は、『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者である城繁幸氏、現役社員200人に500時間インタビューして『若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか』をまとめた渡邉正裕氏、そして、外資系金融、コンサルティング企業の就職事情に詳しい金武貴氏の3人です。
座談会の中は3氏とも、新卒時に入社した業界、会社によって将来の転職力に大きな差が生まれることを述べています。転職力が身につけられる会社として挙げられているのは、次のようなものです。
――今はやりたいことがないけれど、将来、有利な転職をしたいという学生には、どこを勧めますか?
城 名前のある大企業です。転職のとき受けがいいですから。転職というのは、一般的な日本企業だと、学歴はあまり関係なくて、本人のキャリアと前職の会社のブランドで決まるんですよ。だけど、これまでのキャリアが志望の職種と多少違っていても、前職が大企業だったら潰しが利く。
渡邉 商社はいろんな事業をやっていて、2、3年目に異動があったりもするので、何も決まっていない人にとってはいいのかな。あとはリクルート、IBMなど、若いときから活躍できる会社に入っておけば、その後、何をするにせよいいはず。
――軍隊のような会社と自由な会社、どちらを勧めますか?
渡邉 何も決まっていないなら、野村証券みたいな軍隊会社を勧めます。だって、何も決まっていない人は、やりたいことがないから何もしない可能性がありますから。
あとは、規制業種に行かないほうがいい。マスコミとかに行っちゃうとダメですよね。マスコミの人ってみんな給料もらいすぎ。僕の場合、27歳のときに転職して給料が200万円下がりました。でも、僕はいいほうで、30歳だったらたぶん半分。たとえば講談社やTBSで39歳くらいだと、大体デスクとかで1,800万円ぐらいもらっている。その人たちはその3分の1に給料を落としても雇い手がないんじゃないかな。
――でも、テレビ局はいったん入ったら首にはされませんよね。
城 そういう発想が昭和的なんですよ。要するに、どのレールに乗ったら終点まで行けるかということでしょう。でも、新聞はもうすでに暗雲が立ち込めていますよね。大手出版社だって20年後はわからない。
ソニーは、プロの目から見ても依然として転職に有利に働く会社です。4月2日に経営体制を刷新したライブドア・グループの持ち株会社、「ライブドアホールディングス」の社長に就任する平松庚三氏もソニー出身です。その平松氏が、自著『ボクがライブドアの社長になった理由』の中で、ソニー出身者の結束力の強さを語っています。情報源は、ライブドアの「再生」を陰で支えたソニー人脈です。
創業者から直に薫陶を受けた平松氏は、ソニーを辞めた後も、同じスピリットを持つ退職者たちを集めて「SOBA;Sony Old Boys Association」なるソニー非公認のOB会を結成する。こうした幅広い人脈がやがて、ライブドア再建において大きな役割を果たすことになる。
平松氏が社長に就任してまず着手したのが、コーポレートガバナンスとコンプライアンスの再構築だったが、ここでもソニー時代の先輩である大塚文雄氏と真崎晃郎氏の助力を仰いでいる。両氏らの指導によって、ライブドアの新しい経営理念や倫理綱領、行動規範などが作成された。真崎氏はソニーの元専務でガバナンス委員長を務めた人物で、ライブドアの社外取締役コーポレートガバナンス委員長を務めた(現在は退任)。
「寄ってたかってソニーの仲間たちが助けてくれた」──実務面の支援もさることながら、精神面でもソニー時代の上司や友人が、ライブドア再建を担う平松氏の大きな支えだった。
同氏の社長就任を聞くや否や、SOBAのメンバー約160人全員が「平松氏を精神的にバックアップしよう」という支援表明を行った。SOBA以外からも、ソニーの前CEOの出井伸之氏や、ソニー出身で元アップルコンピュータ社長、旧ライブドアの創業者でもある前刀禎明氏からの声もあった。
企業としてのブランド力に衰えが見られ始めたとしても、産業界に根を張った人脈力ではソニーはまだまだトップ・ブランドと言えるのではないでしょうか? しかし、多様な人材を誇るソニーOBだけあって、中には転出先の会社を不本意な形で辞めざるをえなくなった人もいます(ベネッセ森本昌義社長、カンブリア宮殿出演2日後にW不倫報道で辞任)。
森本氏辞任後、暫定的に創業家の福武社長に大政奉還されていたベネッセの後任社長が決まりました。森本氏を選んだときのようにヘッドハンターを使う時間的余裕がなかったせいでしょうか、あるいは社外の人材を招聘することに懲りたせいでしょうか、新社長は一転してベネッセ一筋の人間でした。情報源は、『ベネッセ社長に福島氏、福武氏は会長・CEO専念』(日本経済新聞 2007年4月28日 13面)です。
ベネッセコーポレーションは27日、福島保取締役(54)が同日付で社長に昇格する人事を発表した。創業家出身で社長と最高経営責任者(CEO)を兼務していた福武総一郎会長(61)は会長兼CEOに専念する。ベネッセでは今年2月、ソニー出身の森本昌義前社長兼CEO(68)がプライベートな問題を一部週刊誌に報じられた責任を取って辞任していた。
福島氏は岡山県の高校を卒業後に福武書店(現ベネッセ)に入社。主に通信教育事業に携わり、30歳で部長職についた。入社当初は会員が1万人程度だった「進研ゼミ」の改良に尽力、4百万人以上が学ぶ一大教材に成長させた。
大企業のトップ人事とは、想定通りにはいかないものです。ひと頃は将来のソニー・グループを率いる有力候補と目されてきた人物にも、その可能性は完全になくなりました。情報源は、『SCE、久多良木会長退任へ――プレステ生みの親、PS3世界発売機に』(日本経済新聞社 2007年4月27日 9面)です。
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は26日、久多良木健会長兼最高経営責任者(CEO、56)が6月19日付で取締役を退任し、名誉会長に退くと発表した。平井一夫社長兼最高執行責任者(COO、46)がCEOを兼務する。「プレイステーション(PS)」の生みの親である久多良木氏の退任で世代交代を進め、業績不振に陥ったゲーム事業の立て直しを急ぐ。
26日夕方に開いたSCEの取締役会で久多良木氏が退任を申し出、満場一致で承認された。3月にPS3を欧州でも発売し、全世界で出そろったことで役割を終えたと判断したもようだ。
03年にはソニー本体の副社長も兼任したが、トップダウンの経営スタイルがソニー社内の反発を招き、05年にソニー本体の取締役を退任。昨年12月にはSCE社長の座も平井氏に譲り会長に退いていた。自ら主導したPS3搭載の高性能半導体「セル」の投資負担で、07年3月期のゲーム事業の赤字が2千億円以上に膨らみ責任を追及する声も上がっていた。
久多良木氏はSCEの名誉会長だけでなく、ソニー本体のシニア・テクノロジーアドバイザーとして残るそうですが、基本的にはラインを外れた閑職でしょう。そのままずっと閑職に留まり続けるのでしょうか? 転職力に定評のあるソニーの人材ですので、他社への転身の可能性もゼロではないでしょう。今後の久多良木氏の動向は注目です。
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