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新任社長の出身学部で「攻めの理系・守りの文系」と単純に分類するのは?

2007年06月05日

社会経済生産性本部は、昭和48年からその年の新入社員の特長を表す命名を行ってきました。今年のタイプは、「デイトレーダー型」です。

同本部では、今年の新入社員について「就職した会社とともに育っていこうとは考えず、常によい待遇、よい仕事を求めて『銘柄の乗り換え』(転職)をもくろむ傾向がある」と分析。1日に何回も株取引を行い、細かく利益を確保しようとするネット上の個人投資家に近いとしている。

戦後最長の景気回復局面にあることを背景に、今年は久々に大量採用が実現した。ただ、同本部では「(学生側が有利な)売り手市場だっただけに、早期転職が予想される」とみており、企業が以前のような企業戦士型の人材を育てようとしても「その期待は裏切られる」と指摘した。

毎年のことにはなりますが、まずその年の世相を表す事象を探し出して、新入社員のタイプに命名してから、その理由をこじつけるのいうやり方が採られているのでしょう。したがって命名されたタイプが、本当にその年の新入社員の特長をうまく表しているかどうかは、大きな問題ではありません。恒例の話題作りと考えて、とやかく言わずに軽く受け流しておけばいいようなことです。

一方、その年の新任社長の特長を分析しようという試みも盛んです。こちらの方は経済専門新聞が真面目に分析しているので、その当否も真面目に論評すべきでしょうね。情報源は、『07上期、新社長642人、技術系トップで成長狙う――「脱創業家」も加速』(日本経済新聞 2007年6月4日 1面)です。

2007年上期、新社長642人、技術系トップで成長狙う 2007年上半期の社長交代では、着実な若返りと同時に、製造業を中心に技術畑のトップを据える動きが目立った。業績改善が進む中で、技術に詳しいトップの起用で次の成長のタネを探ろうとしている。

若返りとともに成長重視の姿勢を映すのが文系から理系出身者への社長交代だ。集計でも全体の33%強を理系出身者が占めた。

経営学修士(MBA)のトップが多い米国などに比べ日本企業では理系出身が多く、それが「日本の製造業の強さを支えている」との指摘もあった。だがバブル崩壊後、多くの企業がリストラに追われ、経理・財務などに強い文系社長に主役が移った。理系の復活は企業の攻める意識の高まりを象徴するといえる。

リストラ期に幅をきかすのが文系社長、業容拡大期に必要とされるのが理系社長というのが、日経新聞の分析です。本当にそんな単純な図式が当てはまるのでしょうか? 大学での専攻が文系科目だったら、入社以来営業一筋で社長になった人間も、守りの人材と分類されるのでしょうか? 解せません。

この記事の中で、文系社長の就任で守りの姿勢を打ち出したと言われているのがNTTです。二代続けて人事・労務畑出身者がトップとなったNTTについては、マスコミの間でも多くの注目を集めたようです、こんな刺激的な題名のコラムも見つけました。情報源は、文系出身のNTT新社長はネット接続障害を防げるかです。

技術中心の企業を、文系の新社長は果たして舵取りできるのか。NTTの新社長発表、その直後に起きたインターネット接続サービスの障害、という2つの報に接し、こんなことを考えた。

NTTは5月11日、三浦惺副社長が6月末に社長となる人事を正式発表した。日本経済新聞は、三浦氏の経営課題として、銅線を使った固定電話サービスから光ファイバーを駆使したインターネット接続サービスへの「光シフト」を挙げた。また、正式発表前の報道では、たすきがけ人事ではない点に注目が集まった。三浦氏は東京大学法学部出身、人事・労務畑が長く、和田紀夫社長に続く、“文系社長”となる。これまでNTTは、事務系(文系)と技術系(理系)出身者が交互に社長になっており、慣例に従えば和田社長の後任には“理系社長”が誕生するはずだった。

このコラムの題名「文系出身のNTT新社長はネット接続障害を防げるか」は、NTTの社長は理系がなるべき、というニュアンスを暗示しています。しかし、先ほど紹介した日経新聞の記事のような「理系vs文系」の単純なステレオタイプ化には、コラムの執筆者は反対する立場をとっています。本心はかなり屈折しています。

本コラムの題名を「文系NTT新社長はネット接続障害を防げるか」とした。文系はダメと主張しているように取られるかもしれないが違う。趣旨は、技術企業のトップはどのような要件を備えているべきか、NTTを題材に考えてみよう、ということだ。筆者は正解を持っているわけではなく、あれこれ考えたことを書き連ねるので、読者の方々もこの問題を考えてみていただければと思う。「読者と考える NTT社長の条件」という題名も考えたが、いま一つであったので、やや派手な題名を選んでみた。

コラムの題名にその言葉を使っているので矛盾するようだが、理系と文系に人を区別すること自体、愚行である。理系か文系かといっても、その色がつけられたのは、大学の4年間、大学院まで入れてもたかだか6年程度に過ぎない。そのわずかな期間の差だけを、その後40年近くも取り沙汰するのは馬鹿げている。東大法学部を出たエースは人事・労務や秘書室、東大工学部を出たエースは研究所というように分け、その後、40年間人事交流がほとんどないままに過ごさせ、そのうえで社長を決める、という企業はNTT以外にも存在する。そうした人事をしなければ、経営と技術の両方が分かる人材が育ったかもしれず、実にもったいない。

要するに、大学の出身学部でその後のおおよそのキャリパスが決まってしまうような、NTT型の人事制度を批判しているのです。人騒がせな題名ですが、だからこそ読者の注目を集めることに成功したとも言えます。

ちなみにこのコラムの執筆者である日経BP社経営とITサイト編集長の谷島宣之氏は、こんな経歴でした。

技術者になるつもりで理系の大学に入り主に数学を勉強するが土壇場で心変わりし雑誌記者となる。2005年3月末で記者歴は20年。

自らが理系出身者だけあって、NTTのような技術系の会社のトップは理系出身者が務めるべき、と主張するのを躊躇したのではないでしょうか? 一方、冒頭で紹介した「攻めの理系・守りの文系」と分析した記事を書いた日経新聞の記者は、おそらく文系出身者でしょう。だからこそ、理系を礼賛するような内容となったのではないでしょうか?

「客観報道」を旨としているはずの新聞系の記事にこそ、記者の出身学部による影響が見え隠れしているようにも思えます。遠い昔の出身学部の呪縛に一番とらわれているのは、「理系と文系に人を区別すること自体がナンセンス」というマスコミ関係者ではないのでしょうか?


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