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堀紘一氏のドリームインキュベータで田原総一朗司会の「朝まで生総会」が実現?

2007年06月07日

三月末決算企業の株主総会の開催が、ピークを迎える時期が近づいてきました。日本の株主総会の在り方を改善しようと、1996年には弁護士や公認会計士、学者など専門家と市民株主が連携して、NPO法人「株主オンブズマン」を設立しています。その株主オンブズマンの設立メンバーの一人である、弁護士の松丸正氏は、「開かれた総会」のために企業ができることというタイトルの記事を、日経ビジネスオンラインに執筆しています。

株主総会の閉鎖性が問題視される中で、「開かれた総会」を目指して新しい試みに着手した企業もあります。情報源は、『ドリームI、株主総会のやりとり公表、IR充実ねらい文書化』(日本経済新聞 2007年6月7日 朝刊 14面)です。

ベンチャー企業育成のドリームインキュベータは6日、5日に開いた株主総会でのすべての質疑応答を公表した。出席できなかった株主にも議論を公開することがIR(投資家向け広報)の充実につながると判断した。総会での株主と会社側のやりとりを明らかにする例は珍しい。

「業績予想の下方修正をなぜもっと早く出せなかったのか」「経営判断をぎりぎりまで引っ張り迷惑をかけた」。こうした質疑、やりとりを開示文書にまとめた。総会には個人株主など約230人が参加。株主からは今後の経営戦略や手元資金の活用策についての質問があり、堀紘一会長や社外取締役の田原総一朗氏らが答えた。

株主からは「自社株買いを検討すべきではないか」との声も上がった。同社はもともと自社株取得を検討していたが、こうした発言を受け、総会後の取締役会で自社株取得を決議した。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の元社長堀紘一氏が創業した、事業戦略立案や投資までを含めたインキュベーションサービスを行う会社が、ドリームインキュベータ(以下DI)です。DI社は事業内容の派手さを売り物にしている会社ではありませんが、著名人が経営陣を飾る同社に対しては、株主以外からも注目が集まることが多いようです。

  • 代表取締役会長 堀 紘一
  • 代表取締役社長 山川 隆義
  • 取締役(非常勤) 井上 猛
  • 社外取締役 田原 総一朗(評論家、ジャーナリスト)
  • 特別顧問 宮内 義彦(オリックス株式会社 取締役兼代表執行役会長グループCEO)

日経新聞の記事にあるように、6月5日に開かれたDI社の株主総会の質疑応答要旨は、Web上で公開(PDF)されています。その内容のほとんどは、通常の株主総会と同じように同社の業績に関するものです。この中から、同社の業績数値に関心がない人にも、楽しめそうな応答部分をピックアップしてみました。

Q6: DI の事業の性質上、DI 株への投資は経営陣の人となりを見て判断している。DI の事業は後の世代に受け継いでいくべき事業だと考えるが、堀会長が後の世代に伝えたいと考えていることを教えて頂きたい。

堀: 正直申しまして、このレベルまで来るのに、7年かかるとは思っていませんでした。その点では、忸怩たる思いもございます。外から見ると株価や時価総額も、2 年前に東証一部に移籍した頃の方が今よりも良かったのではないか、という言い方も出来ると思います。ただ、中で働いている者の実感としましては、その頃に比べ、はるかに良くなってきていると思っております。まず、幹部が大いに育っております。山川社長以下、30 代から40 代前半の幹部がどんどん業績を引っ張っていくようになりました。創業以来、初めて「こういう会社にしたい」と目指していた姿が見えてきております。彼らが一流のビジネスパーソンに育っていることに、無上の喜びを感じております。

(中略)

「真っ当な会社」になることを目指してひたすら走ってまいりましたが、ようやく基盤も出来てまいりましたので、これだけ多くの株主に支援されていることを肝に銘じて、今後はその期待に応えるべく、しっかり「稼げる会社」にもなっていきたいと気を引き締めているところです。

時として「ゴーマン」な印象を与える堀紘一氏も、自社の株主総会議長としては極めて低姿勢に対応しているようです。もちろん、これには業績を大幅に下方修正せざるをえなかった、という苦しい事情も影響しているのでしょう。問題の業績予想の修正に関しては、次のようなやりとりがありました。

Q9: 株主になって20 ヶ月、喜びも痛みも分かち合いながら、会社と株主の関係のキーワードは「信頼」だと感じている。第7期の第3四半期において、売上高4,950 百万円を死守するとの業績予想を出していたにもかかわらず、3月になって業績予想の変更を発表した。早い段階で下方修正を出さなかったことで、DI は信頼を無くしたのではないか?

堀: 株式を扱っている業の性格上、当社の業績は相場の影響から逃れられません。新興市場の低迷が続く中で、

  • 抱えている未上場株が期中にIPOできるかどうかを読みきれなかった
  • ギリギリまで粘って上場株の売却タイミング、及び是非について判断していた

という二つの要因で、下方修正を出すタイミングが結果として3月になってしまいました。最終的な経営判断を行ってから直ちに開示を行ったものではありますが、その経営判断をぎりぎりまで引っ張ったことで、ご迷惑をおかけしたことについては、深くお詫び申し上げたいと思います。

田原:少し余計なことですが、補足させて頂きます。多くの経営者を見てきましたが、普通の経営者は駆け引きをするものだと思います。ちょっと遠慮気味に出すとか、曖昧にするなど。しかし、堀さんは真っ正直にやる。マネジメントとしてその段階で信じているものを、曖昧にしないで、そのまま出す。一般的にはとても不器用なやり方だと思うのですが、それがDI の強みの一つであると、私は感じております。

堀氏が信頼に足る人物であることを補足するために発言したのが、社外取締役の田原総一朗氏です。ジャーナリスストならではのコメントですが、株主総会の場で十分なフォローになっていたどうかは疑問です。取締役の田原氏に関しても、次のようなやりとりがありました。

Q17: 田原さんに聞きたいのだが、DI株をなぜ持っていないのか? 持っていない人が取締役になれるのか?

堀: 株式を持っていない者が取締役になれるかどうかという点については、法的に全く問題ございませんし、そのような例は沢山あります。田原さんに取締役になってもらう際に、三顧の礼で迎え入れました。「そのような申し出を沢山もらっていて受け切れないので、全部断るしかない」と渋る田原さんを説得して、半ば無理やり就任してもらった経緯があります。お忙しい中、毎月の取締役会にもほとんど参加してもらって、本当に感謝しております。株式を保有していない理由については、一般的に取締役になるとインサイダー取引規制にかかる時期が増えるために、売買しにくいという制約もあり、「李下に冠を正さず」で取得してもらっていないという点もありました。ただ、皆様のご要望が強ければ、田原さんにDI株を1株でも持って頂けるかどうか、この後、相談してみたいと思います。

田原氏の登場により、DI社の株主総会も俄然テレビ討論会ぽい雰囲気に変わったようです。株主の中にも、「サンデープロジェクト」的な総会を望んでいる人もいたりします。

Q14: 株主は色々なことを言いたいし、聞きたいが、時間の限りもある。1年に1回でいいので、田原さんが司会になって株主の本音をぶつける機会を作って頂いてはどうか? ビジネスモデルだけでなく、個人株主と経営のあり方についても、他の企業が真似できないモデルを目指して頂きたい。

田原:堀さんがやりたいと仰るならば、やりましょう。今日は時間がないので出来ませんが。

堀: 田原さんはサービス精神旺盛なので、ひょっとしたら来年の株主総会では実現するかも知れません。総会そのものの中では難しいかも知れませんが。検討課題とさせて下さい。

堀氏が期待するように田原氏のサービス精神が発揮されて、「朝まで生総会」が実現することもありえるのでしょうか? 

ライブドアと同じ港陽監査法人を使っていてために、監査法人の変更を余儀なくされたり、業績の大幅な下方修正など、必ずしも順風満帆とは言えないのが、最近のDI社です。それでも、株主総会の質疑応答を公開に踏み切ったことは、経営の透明性を高めるという点で評価されるべきでしょう。

なお、DI社の経営に関しては意見の相違がないように見える堀氏と田原氏ですが、ライブドアについては、かなり意見を異にしているようです。テレビでの報道を見た限りでは、堀江元社長を厳しく批判するのが堀氏で、むしろ擁護する側に回っているのが田原氏という印象を受けます(ライブドア事件の余波で監査法人変更を余儀なくされた堀紘一氏の甘さ)。

時としてビジネス哲学が違うようにもとれる2人が、DI社の経営方針では完全に一致しているというのも、奇妙な話ではあります。本当に「朝まで生総会」が実現して、そこら辺の違いが浮き彫りになったりすると、さらに面白い展開が期待できるのですが。


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