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拡大を続けてきた命名権ビジネスを利用した錬金術が早くも曲がり角に

2007年07月05日

スポーツ競技場を所有する地方自治体にとっての新たな錬金術として、急速に広まりつつあった「命名権(ネーミングライツ)ビジネス」が、早くも転換点を迎えつつあります。陸上トラックのない球技専用施設として、神奈川県内のサッカー、ラクビーファンから長年にわたって親しまれてきたのが、横浜の三ツ沢公園球技場です。横浜市が命名権を売りに出していた三ツ沢球技場のスポンサー企業が、なかなか見つかりません。情報源は、『三ツ沢球技場の命名権、横浜市が募集延長』(日本経済新聞 2007年7月4日 26面)です。

横浜市は3日、三ツ沢公園球技場(神奈川区)の命名権を購入するスポンサーが期限までに見付からず、募集期間を延長すると発表した。サッカーJリーグ、横浜FCのJ1昇格で、本拠地である同球技場の広告価値向上を見込んだが、正式な提案はなかった。

期間5年以上、年間8,000万円以上の契約条件は変更しない。市水・緑管理課によると、4社から購入希望が寄せられたが、「条件が合わない」といった理由でいずれも応募を見送ったという。

三ツ沢球技場のスポンサーが決まらない最大の理由は、横浜FCがJリーグで最下位を独走していることにあります。抜本的なてこ入れ策が講じられない限り、自動降格圏にある横浜FCは、来季はJ2に舞い戻る可能性は極めて高いはずです。スポンサー企業が三ツ沢球技場の長期的な広告効果に確信が持てなかったとしても、当然の反応でしょう。

横浜市は強気の契約条件を変更するつもりはないようですが、条件を一部緩和してでも早めにどこかの企業と契約してしまうのが、賢い商売と言えるのではないでしょうか。横浜FCがJ2に降格したり、集客力のある三浦知良が引退でもしたりすれば、命名権の価値がさらに下がることは確実です。

一方、首尾良く長期高額のスポンサー企業を捕まえることに成功した球技場でも、想定外の問題に見舞われることもあるのが、命名権ビジネスの難しさです。情報源は、『命名権ビジネス、名傷つくリスク』(日経産業新聞 2007年7月4日 24面)です。

「ネーミングライツ契約を続けると(ライオンズの)イメージが悪化しないか心配だ」。先月28日に開かれた西武ホールディグス(HD)の株主総会で、ある株主がこう訴えた。

西武ライオンズの本拠地球場は2006年1月から「グッドウィルドーム」という名称になり、二軍のチーム名は「グッドウィル」となった。グッドウィル・グループ傘下のコムスンが不正請求事件を起こしたことが、西武球団に影響するのではないかというのだ。小林信次球団社長も「(グッドウィル・グループの)推移を見守りたい。心配している」と不安げだ。


これまで西武の事例は命名権ビジネスの成功例といわれていた。インボイスと契約し、06年末まで球場、二軍チームには企業名が冠されていた。効果は大きくインボイスの木村育生社長が「できれば10年、15年の長期契約をしたかった」と残念がったほどだ。

契約先が変わり金額は上積みされた。球場は所有する西武鉄道が、二軍は球団が契約したのだが、5年間の総額は推定25億円に達する。西武球団は大幅な赤字幅の圧縮に貢献すると期待していたが、思わぬ事態が起きた。グッドウィルは「契約に変更はない」とし、西武も「コメントする立場にない」と今は静観するしかないのが実情だ。

レッドソックスから支払われた松坂のポスティング料に加えて、球場の命名権料増額と、今季は収益的に幸運に恵まれた西武球団ですが、まさに好事魔多しということでしょう。

グッドウィルに命名権を奪われたインボイスが、10年以上の長期契約を希望しているのにも、少し疑問を感じます。事業環境が激変する可能性の高い携帯電話関連ビジネスを基盤とするインボイスが、そんな長期契約を結んで大丈夫なのでしょうか? そもそも本業の方でも、10年後のビジネスプランの見通しを立てるのが不可能に近い企業が、資金を長期的に固定化することを考えるのは、無謀だと思います。

それでは、現在は金を持っているけれども、環境如何では浮沈するリスクの高い新興企業を避けて、安定感のある事業分野で地道に営業している大企業をスポンサーにすれば、安心なのでしょうか? しかし、安定した大企業であっても、地元に馴染みのないスポンサーが冠についた場合は、違和感を感じる施設利用者も少なくありません。

命名権ビジネスはスポンサーと球団、球場側の双方にメリットをもたらすとされていたが、ここに来て必ずしも思惑通りに行かないケースも出ている。

3月から新名称になった「東北電力ビッグスワンスタジアム」。地元やJリーグファンなどを除き、どれだけの人が所在地を知っているだろうか。答えは新潟市。J1のアルビレックス新潟の本拠地だ。新潟は東北電力の営業範囲だが、一般には新潟県を東北に含まないケースもある。どこにあるか分からないと、他の地域への宣伝効果が得られない。地元には戸惑いの声も広がっている。

元々営業圏が法律で決まっていて競争も限定的な電力会社が、命名権を利用して知名度アップを狙う必要があるのでしょうか?

また、命名権ビジネスはスポーツ関連以外でも拡大基調にありますが、すべてのスポンサー企業がイメージアップに成功しているわけではありません。サントリーが渋谷公会堂の命名権を購入して、「渋谷C.C.Lemon」ホールに変更したことは、古くからの音楽ファンの間での評判は悪いようです。

命名権の取得と言えば聞こえはいいのですが、愛着のあった名前が突然変わることは、消費者からすれば「金にものを言わせた大企業のエゴ」としか見えない場合もあります。イメージアップを狙って取得した命名権が、逆効果になることもあるでしょう。

基本的には、命名権ビジネス自体は、地元の施設利用者にとって何の利益ももたらさないものです。施設保有者側としては、命名権ビジネスで得た収入の一部でも、地元民に還元するような取り組みを考えていくことが、重要なのではないでしょうか。


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