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毎朝通勤電車で新聞を読むことはなぜ時代遅れの非生産的行為なのか?

2007年07月18日

私は新聞を読むことを朝の日課としています。月に一度ある新聞休刊日に生活のリズムが乱されたように感じたりする私は、今の時代には古いタイプの人間なのかもしれません。そんな私にとって気になるタイトルの記事を見つけました。その道の専門家(ガイドと呼ぶ)が執筆する「All About Japan」「朝に新聞を読んではいけない」です。

筆者は午堂登紀雄という方で、プロフィールには「独自の投資理論と手法を駆使し、貯金70万円から1年で3億円の資産形成に成功」とあります。どうやら資産運用の専門家のようです。

「朝」に最も重要な仕事、クリエイティブさを要求される仕事、難易度の高い仕事、緻密さを要求される仕事をすべきだ、ということは明らかです。だからこそ、過去も現在も「朝」の重要性が叫ばれるのでしょう。では、私たちはその貴重な朝の時間を、本当に有効に活用しているでしょうか。「朝型が成功の秘訣」と早起きしたり、時間管理のノウハウ本を読んでコマ切れ時間を有効に使ったり、という努力も悪いことではありません。

しかし、そもそも、集中できる時間帯に集中してやるべきことをできなければ、できる量も質も落ちてしまいます。逆に言うと、朝をうまく使えれば、眠いのに無理して早起きしたり、電車の待ち時間にせせこましく電子ツールを取り出したりしなくても、十分有意義な一日となるものです。時間管理の細かなテクニックは、その後でも間に合います。

大切なのは、朝にやるべき仕事を集中させ、時間の密度を高めることです。睡眠時間を減らすのではなく、時間の密度を上げること。細切れ時間を意識する前に、集中できるときに集中してやること。これが大原則です。ではどうすればいいのか、ですが、簡単な方法をご紹介します。

時間管理の細かなテクニックを学習しようとするよりも、まずは朝に重要な仕事を行うことに集中せよ、というのが筆者の主張です。これはよく言われていることなので、特に違和感を覚えることもありません。続いて紹介されている「簡単な方法」とは、以下のようのなものです。

  • 朝に新聞を読んではいけない
  • 朝にメールチェックしてはいけない
  • 朝にTODOリストを書き出してはいけない
  • 朝の通勤電車は寝てはいけない
  • 午前中に人と会ってはいけない

いずれも「~いけない」ばかりです。筆者の言う通りに実践した場合、ほとんどの人が朝にやることがなくなってしまうのではないでしょうか? 実際のビジネスの現場では、本当にクリエイティビティが要求される仕事はそれほど多くもないでしょうし、そのためにこれらのルーティーンワークをすべて放棄する必要もないように思います。また、たった一人で仕事をする人以外には、実行するのが難しい方法のようにも感じます。

同様の感想を持った人も多いようで、この記事をピックアップしたソーシャルブックマークのnewsingでも、ポジティブな評価1件に対して、ネガティブが11件と、極めて不評です。

この記事が失敗した理由は、資産運用の専門家である筆者が専門外の時間管理のことを書いたことにあります。「All About Japan」の売り文句は、「その道のプロが、あなたをガイド」です。カテゴリーにこだわらずに比較的自由に書けるブログとは、そもそものコンセプトが違います。「All About Japan」の読者は専門家としての意見を期待しているのですから、専門以外の分野について言及したい場合は別のサイトを利用すべきでしょう。

さらに新聞愛読派にとっては、『通勤電車で新聞を読む人はなぜ仕事が遅いのか』というタイトルの本も気になります。「通勤電車で新聞を読んではいけない」といったストレートなタイトルではなく、疑問系としたのは、ベストセラーの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のパターンを踏襲したからでしょうか?

本書の著者は、ビジネススキル系の研修講師として活躍し、多数の著書のある松本幸夫氏です。同氏のプロフィールには、こうあります。

* 1958年東京生まれ。ヒューマンパワー研究所所長。目標管理や時間管理、スピーチ・プレゼン・交渉などの「コミュニケーション術」を主なテーマに、企業研修・講演活動を行っている。

* 月の3分の1は地方出張と多忙をきわめながらも、2ヶ月に1冊ペースで単行本を出版、雑誌記事の執筆も精力的にこなす。タイムマネジメントの手法を自ら実践する、時間活用のエキスパートである。

このプロフィールからは、どんなビジネスキャリアを経て企業研修の講師として活躍できるようになったのかが、まったく伝わりません。こういうプロフィールしか明かさない人物が、「コミュニケーション術」の専門家であることには疑問を感じます。

そうは言っても、松本氏の活動スケジュールがプロフィール通りに多忙を極めるのであれば、同氏がタイムマネジメントを自ら実践していることは、確かでしょう。そう考えれば、その時間管理術に興味を惹かれないこともありません。本を買わないまでも、『松本賢人の「生き方ヒント」~見逃しがちな生き方のヒント。賢人松本の憶え書きメモを覗く。』というサイトでは、そのノウハウを一部を読むことができます。

しかし、自ら「賢人」と名乗る人物には本当の「賢人」はいない、というのは常識です。その「コミュニケーション術」に対する疑念は深まるばかりです。

『通勤電車で新聞を読む人はなぜ仕事が遅いのか』のような、「ネガティブ + 疑問系」のタイトルは、書籍に限らず現在の流行のようです。ブログでも、『なぜ新宿紀伊國屋の店員はつまらなそうなのか』というタイトルの投稿を見つけました。

かなり刺激的な内容の投稿に対しては、コメントも多くプチ炎上状態になっています。こうした事態に対応して、筆者は追記で謝罪するとともに、コメントに対しても誠実に回答しています。その真摯な態度には好感が持てます。私自身は書店の店員には、「通常は顧客の邪魔にならない、かつ何か聞きたい時にはすぐに見つかる程度の存在感」しか期待しません。したがって、この程度の内容の投稿がこんなに関心を集めたのに驚いた、というのが正直な感想です。

本日の結論は、「ネガティブで意表を突くタイトルは注意を惹くことができるが、中身が伴わないと逆効果」にしておきます。他人のことを偉そうに言えた義理ではない、というのは重々承知の上での結論ですが。


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