出井伸之ソニー前会長が内外の企業の社外取締役に就任したのはガバナンスのため?
2007年07月20日
日本取締役協会では、「企業の発展ステージ」別に各企業にとって最良のガバナンスが存在するという観点から、企業の多様性に対応したガバナンスのあり方を、「ベストガバナンス報告書」[PDF]として発表しました。報告書を中心になってまとめたのは、出井伸之ソニー前会長と川本裕子早大教授等の有識者です。
創業者一族の経営への関与度合いに応じて企業の発展段階を分類し、各段階に応じてガバナンス上の問題点を具体的に指摘しているところが、本報告書の眼目となる部分でしょう。情報源は、『最良のガバナンスとは――創業者の影響力は極力排除、相談役制は廃止か任期設定を』(日経産業新聞 2007年7月18日 22面)です。
「第一段階」の企業は創業者一族が株式の大半を持ち、経営権も掌握している。創業して間もない中小・ベンチャー企業の大半が当てはまる。この段階では創業経営者の独断専行を防ぐことが最大の課題となる。それには創業経営者にガバナンスの重要性を気づかせる仕組みが必要となる。
「第二段階A」の企業は創業者一族が株式の大半を保有するが、経営を創業一族以外の者に委ねている。未上場の中堅企業の一部などがこれに当てはまる。経営者が「番頭さん」的な存在のままだと、創業者の独断専行を抑えきれない。このタイプの企業には創業家と経営者が対等な関係を築き、チームとして機能することが求められる。
創業者一族が経営権を維持しながら、株式を上場している企業が「第二段階B」となる。このタイプの企業では創業家が企業のシンボルとして権威を持つことが多い。後継社長を世襲で決めるのが一般的だが、後継者の養成・選定の客観性を担保することが重要になる。
「第三段階」の企業では創業者一族の関与はほとんどなく、経営者は社内昇格者や社外から招いた経営の専門家であり、株主の大半は機関投資家などの外部投資家となる。第三段階では、社長・会長の先任者が顧問や相談役として居残って経営に関与してしまうことが問題となる。顧問・相談役制度を廃止するか、存続するにしても任期を設けるなどして影響力を極力排除することが求められる。他社の社外取締役として活躍してもらうことも有効な解決手段だ。
前回の投稿では、創業者の坂本孝元会長が不正会計問題を引き起こしたブックオフについて、少し触れました。当時のブックオフは、この分類上の「第二段階B」に位置していたことになります。坂本氏の後継者としてパート出身の橋本眞由美氏が、一部上場企業の社長に就任したことは、マスコミを大いに賑わせました。しかし、その橋本氏も会長の不正会計問題の責任を負って、代表権のない取締役会長に棚上げされてしまいました。代わって社長になったのは、マッキンゼー出身の佐藤弘志氏です。これでブックオフは形式的には「第三段階」に進化したことになります。
ライブドア、加ト吉、グッドウィルグループ等、不祥事でマスコミを賑わした企業は、すべて「第二段階B」の企業群です。こうした企業でも事件後は、コンプライアンス強化策として「第三段階」に進化するのが普通です。逆に言えば、不祥事でも起きない限り、自らの意志で「第三段階」へ進もうと考える創業者は、希有な存在ということでしょう。不詳事後も折口会長が経営トップに居座ったままのグッドウィルは、依然として「第二段階B」のままということになります。
さらに本報告書では、「第三段階」の企業のガバナンスにおいて、社外取締役の果たす役割を重視しています。報告書の提言を率先垂範するつもりでしょうか、出井伸之ソニー前会長は、中国検索大手の「百度」とフリービットの社外取締役に、相次いで就任しています。これらの企業のガバナンスで、出井氏がどのような手腕を発揮するのか注目でしょう。
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