長男に三行半を突きつけられたナルミヤ創業者が後継者選びを託すリヴァンプ
2007年07月24日
投資ファンドのSBIホールディングが子会社のSBIキャピタルを通じて、子供服メーカーのナルミヤ・インターナショナルに対するTOBを開始しました。買い付け上限は発行済み株式数の66.65%で、創業者で筆頭株主の成宮雄三社長と一族や経営陣が賛同の上で実施される今回のTOBは、友好的買収となります。
TOBが成立した場合、SBIキャピタルが6.5%程度の株式を企業支援会社のリヴァンプに譲渡し、リヴァンプがナルミヤに後継の社長を送り込むことになっています。ナルミヤが同社の再建策として友好的TOBを選んだ背景には、同社の後継者を巡っての複雑な内部事情が関係しています。情報源は、『後継者選びの誤算が後押ししたナルミヤの友好的TOB受け入れ』(週刊ダイヤモンド 2007年7月28日 20~21ページ)です。
成宮社長が後継者に据えたいと目論んできたのは、長男である成宮一雄氏。銀行勤務で経営者修業も積み、社内でもそれが“定説”となっていた。
ところが、その一雄氏が06年3月に「一身上の都合」で取締役を辞任。ナルミヤを離れ、現在は「ストンプ・スタンプ」という高級子ども服店を展開中だ。
本命候補の退社で後継者選びは暗転。成宮社長が「この2年ほど、後継者探しのために、商社やアパレル業界出身者など何人もの人物に会ってきた。が、なかなかこれはという人物に出会えなかった」と漏らすように混迷している。
そして、成宮社長は自分で後継者を選ぶことは断念。「リヴァンプというチームに、後継者を選んでもらう」という道を選んだわけだ。このTOBスキームを考え出したリーテイルブランディングの秋元之浩社長も「成宮社長の真意は創業家と経営の分離にある」という。
成宮社長は「長男に力があるのなら戻って社長ということもあるかもしれない」と微妙な言い回しでいまなお“親心”を示すが、後継者の筆頭候補は、リヴァンプから送り込まれる人物というのは、衆目の一致するところだ。
かつては次期社長と目されながらも、ナルミヤを去ることになった雄三社長の長男・一雄氏は、決して凡庸な二代目ではありませんでした。満を持して父親の会社に入社した一雄氏は、やり過ぎて会社を去らざるをえなくなったというのが真相です。情報源は、『業績悪化の本当の理由-一大ブームから一転 子供服ナルミヤの盛衰』(週刊東洋経済 2007年3月31日 142~143ページ)です。
一雄氏は、銀行勤務の後、海外で経営修士号を取得して帰国、03年7月にナルミヤの経営企画室長に就任し、上場準備に奮闘した。
「一雄氏が来てから、社内の雰囲気ががらりと変わった」と別の元社員が明かす。すべてどんぶり勘定だったともいえる経理をすべて統括管理し、投資案件一つひとつの費用対効果を測ってコストを削減。上場に向け、旧態依然とした管理体制を正すべく大ナタを振るった。
一雄氏が行った改革は、オーナー社長が切り盛りする中小企業から上場企業に脱皮するためには、確かに必要なプロセスではあった。だが、「洋服好きの自由奔放な集団が、厳しい引き締めの下に置かれて委縮してしまった」と元社員は振り返る。
これを契機に、それまで各部門で中心的役割を担っていた社員が数多く退社。中核社員が抜けることで、経営陣と社員の距離は離れ、社内のモチベーションは一層低下した。
一雄氏は数字を駆使して理詰めでいくタイプ。彼の手法は、アナログなしきたりや感性を重んじるこの業界と、なじみがいいとはいえない。特に、雄三社長とは、常に意見の齟齬が生じていた。「社内会議でも途中からは必ず親子げんか。同席している社員にとっては、バカバカしいかぎりだった」(元社員)。次第に社内でも孤立していった一雄氏は、06年3月にナルミヤを飛び出した。
外からやってきた銀行出身のMBAが、性急に厳格な社内管理を導入した結果、古参社員の反発にあって退社を余儀なくされた、という点ではよくありそうな話ではあります。しかしナルミヤの生え抜きではないにせよ、成宮一雄氏は子供服ビジネスに対する情熱を持っていたことも事実のようで、現在は自分で立ち上げたセレクトショップ「ストンプ・スタンプ」の上場を目指して奮闘中です。
ナルミヤへの未練を断ち切るためでしょうか、それとも自分の会社への投資に回す必要に迫られたからなのでしょうか、一雄氏は昨秋以降、保有株を市場で大量売却しています。同氏の保有割合も年初の約14%から4%未満に下がり、それがナルミヤ株の値下がりの一因となっています。
こうした複雑な事業を抱えるナルミヤに新社長を派遣することになったリヴァンプは、言わば親子喧嘩の尻ぬぐいを任されたということなのでしょう。リヴァンプから派遣されることになる次期社長は、創業者の実の息子が成し遂げられなかった経営改革を推進しなければならないわけで、決して簡単なことではありません。プロの経営者として経営合理性を全面に押し出したやり方では、一雄氏同様に社内の反発を招くでしょうし、同じ血を流すのであれば、創業者の息子にされた方が我慢できると思われたとしても不思議ではありません。
リヴァンプの代表パートナーの澤田貴司氏は、IT関係のイベントの講演で「チームプレーの大切さ」を説いています(【IT Japan 2007】「誰が正しいではなく,何が正しいかを議論すべきだ」,リヴァンプの澤田代表パートナーが熱弁)。また、ユニクロ出身の澤田、玉塚の代表パートナーは、アパレル業界が理詰めだけではいかないことも知っているはずです。銀行出身の成宮一雄氏のように、業界の特殊事情を無視した独断専行との非難を浴びる可能性は低いでしょう。
それでも、もし一雄氏の新会社が順調に業容の拡大を続ける中、リヴァンプが派遣した社長が人心を掌握するのに時間がかかれば、創業者の長男の復帰を待望する声が出てくることもありえる話です。またナルミヤの改革がうまくいった場合は、雇われ社長から創業者の長男への大政奉還という話が持ち上がる可能性もあるでしょう。
さらに想像を逞して、2、3年したらナルミヤとストンプ・スタンプが統合されるシナリオが織り込み済みで、長男を帰りやすくするために今回のTOBが仕組まれた、というのは考えすぎでしょうか?
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【追記】
リヴァンプの澤田、玉塚両氏の出身会社であるファーストリテイリングが米高級百貨店チェーンのバーニーズ・ニューヨークの全株取得を目指しています(ファーストリテイリングによるバーニーズ・ニューヨーク買収は勝算ゼロ?)。予想通り競争相手のドバイ政府系ファンドのイスティスマールは、対抗値上げを考えているようです。情報源は、『バーニーズ買収額引き上げも』(日本経済新聞朝刊 2007年7月25日 9面)です。
米高級衣料品専門店バーニーズ・ニューヨークの買収を巡りドバイ首長国政府が出資する投資会社イスティスマルのデビッド・ジャクソン最高経営責任者(CEO)はロイター通信に対し、「(7,500万ドル高い対抗案を提示している日本の)ファーストリテイリングの出方を待ち、それから何をするか決める」と述べ、買収額を引き上げる可能性を否定しなかった
これも大方の予想通りに、ファーストリテイリングは「当て馬役」で終わってしまうのでしょうか?


コメント
はじめまして。
「THINK!」 (東洋経済新報社)に一年間(全4回)論文を掲載することになりました。
7/23発売のTHNIK! SUMMER 2007 No.22 「実践!アドボカシー・マーケティング」(P153-159)が第一回目となります。是非ご一読ください。
Posted by: アドボカシー・マーケティング | 2007年07月25日 00:46