口コミマーケティング時代ではCM好感度と出稿量の多さは必ずしも比例しない
2007年07月27日
以前の投稿で紹介した家庭教師のトライのテレビCMが、7月26日にCM総合研究所から発表されたCM好感度ランキング、『2007年7月後期 銘柄別CM好感度TOP10』で堂々7位に入りました(映像に目を奪われてメッセージが記憶に残らない(?)家庭教師のトライのCM)。トライ以外の上位銘柄を、携帯電話3社や飲料メーカーなど広告出稿量の多い常連が占める中、トライの健闘はひときわ光ります。
トライの例が示すように、CM好感度は必ずしも出稿量に比例するわけではありません。今回は、投資効率に優れたCM制作の舞台裏を2つ紹介します。最初は、『ポッキー流「好感度CM」の作り方――視聴対象を絞り込む』(日経流通新聞MJ 2007年7月27日 18面)です。
新進女優の新垣結衣がオレンジレンジのアップテンポな楽曲「DANCE2」に合わせ、軽妙な振り付けの「ポッキーダンス」を披露する新垣バージョンのCMは全部で3本。CM総合研究所が毎月発表しているCM好感度ランキングでは、東京・原宿を舞台に撮影した2本目の「DANCE DANCE編」が年明けの1月の調査で2位。新世界や道頓堀など大阪の観光名所を新垣結衣が走り回った3本目「Hello New Friend!大阪編」も5月の調査で2位に食い込んでいる。
調査対象となっている在京キー局が1カ月間に放送するCMは平均すると、1,200社の3,200銘柄。一つの銘柄で複数のCMを用意する企業が多く、作品の総数は月間4,500にもなる。2位という順位が示す好感度の高さに加え、「ポッキーのCMは効率の良さも目立つ」とCM総合研究所代表の関根建男氏は指摘する。
例えば、5月の場合、ポッキーのCM放送回数は月間126回とランキング上位10銘柄では最少。少ない放送回数でも消費者に「好感度」を印象付けるポッキーのCMについて、関根氏は「テレビの特性をつかんでいる。出演者とストーリー展開で視聴者の共感を集め、音楽もしっかり働き掛けている」と解説する。
このCMはグリコのサイト『新垣結衣さん出演 ポッキーCM』でも見ることができます。以下がAlexaで調べた、このページのトラフィックの推移です。
下降トレンドにあったトラフィックが7月に入ってから反転したように見えるのは、新垣結衣主演のドラマ『パパとムスメの7日間』がスタートした影響でしょう。CMに起用したタレントが注目度の高いドラマに出演することになったのは、幸運と考えるべきです。しかしポッキーのCMの成功そのものは決して偶然ではなく、周到に準備した結果もたらされたものでした。
新垣バージョンのCM放送が始まるほぼ1年前。江崎グリコの社内では広告、開発、営業の3部門からスタッフを集めた「ポッキープロジェクト」が発足した。目的は成熟したチョコレート菓子の市場にあって、売上高が頭打ちのポッキーのテコ入れ。CM制作ではまず、試聴対象とする「コミュニケーションターゲット」を女子高生に絞り込んだ。
主婦を中心に幅広い購買層を持つポッキーにもかかわらず、試聴対象を女子高生に絞ったのは「菓子への関心が強く、新しい情報を受け入れる柔軟性があり、ほかの年齢層への情報発信源になる」(広告部クリエイティブチームの明内貴志氏)から。女子高生に広く浸透すれば、ポッキーを長く愛してくれるファン作りにもつながる。
絞り込んだ試聴対象に向けて、CMでは「銘柄も、特性も、広く知られた商品だからこそ、世界観を伝える」(明内氏)との方針を確認。「ポッキーはチョコレートか、スナックか」という議論からその世界観を探り直した。「チョコレートなら『しっとり』。スナックなら『パリッ』というのがCMのイメージ」(明内氏)。結果、「ポッキーはスナック」と判断し、世界観を表す言葉を「はじける」と決めた。
対象の「女子高生」、世界観の「はじける」。この2つのキーワードに照らせば、新垣バージョンのCMは出演者が「女子高生と等身大の存在。はじける女の子が街に飛び出せば、みんなが楽しさを共有できる」(明内氏)というストーリー展開を狙い通りに表現した格好。これに若年層の支持が厚く、CM音楽で実績のあるオレンジレンジから楽曲の提供を受けた。
2つ目は、「雪国もやしは、めちゃめちゃ高いから、みんな絶対買うなよ~。雪国もやし!」の、歌声が今でも耳に残るほどインパクトが強烈だった『雪国もやし』のCMです。このCM開始後、製品の販売数量が6倍、販売金額が7倍に伸び、取り扱い店舗数も約2,500店舗と5倍に増加した効果があったそうです。雪国まいたけマーケティング部對馬(つしま)秀夫係長は、CMの狙いについて次のように語っています。情報源は、「めちゃ高いから、みんな買うなよ~」、異例のCMをつくるです。
──昨年4月から放映された雪国もやしの「買うな」というテレビCMには驚きました。なぜ、こんなCMを企画したのですか。
對馬(つしま) 買っていただきたいのに「買うな」というテレビCMは、確かに普通では考えられません。しかし、やるんだったらインパクトのあるものをやろう、売り上げを一気に伸ばせるものをやろうという考えが根底にありました。テレビを見ながら家事をしている人が、その手を止めて、振り返るような内容にしたいと。
もちろん、その一方で、「ここまでやったら必ずクレームが来るだろうなぁ」と想定してもいました。案の定、放送開始から1週間は、多くのお叱りを頂きました。「買うなとは何事だ」、「新潟県の恥だ」など、窓口の電話は鳴りっぱなしでした。弊社の社長のところにも直接電話が入ったようです。
しかし、1週間を過ぎた途端に、こうしたクレームが無くなった。一方で、「どこで売っているのか」、「どこで買えるのか」といった問い合わせが一気に増えた。これも、「買いたいのに買えない」というお叱りの声ではあるのですが(笑)。問い合わせの内容が大きく変化したのです。
サイトへのトラフィックが終息しても、拡大した雪国もやしの販売数量が現在も維持されいるからには、CMをフォローする形で店頭POP等の効果的なマーケティング施策が実施されたことが想像できます。案の定、YouTubeで『雪国もやし・店頭用PV』を見つけることができました。
動画サイトの普及で口コミマーケティングの影響力が大きくなった現状を考えれば、強烈なインパクトのあるCMをテレビで数回だけ見せて、その後は動画サイトでの口コミを利用する、といった効率的な方法も十分可能な時代になったのではないでしょうか。
★恐縮ですが、『人気ブログランキング』を クリック してください。


