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不動のブランド力を誇っていた「白い恋人」賞味期限偽装事件の深刻度

2007年08月15日

北海道を代表するお菓子と言えば、1976年に石屋製菓から発売された「白い恋人」です。その「白い恋人」の賞味期限が偽装されていた問題が発覚しました(「白い恋人」回収、賞味期限偽装)。土産物品の最需要期である夏の行楽シーズンのど真ん中で起きた今回の事件は、石屋製菓一社の売上のみならず、新千歳空港の土産物売上全体に与える影響は決して少ないないようです。情報源は、『都市経済特集 北海道 復活の勝ち組・負け組』(週刊ダイヤモンド 2007年6月23日号 150~165ページ)です。

“要冷蔵”で販売されているロイズコンフェクトの「生チョコレート」、薄焼きのクッキーにホワイトチョコレートを挟んだ石屋製菓の「白い恋人」、ビスケットでレーズンバターを挟んだ六花亭の「マルセイバターサンド」。北海道土産の御三家である。新千歳空港の土産物店の多くが、この御三家の商品を最も売れ行きがよい入り口に山積みしており、実際、飛ぶように売れている。

ただし、土産物店にとってはそれも痛し痒しのようだ。「御三家の商品は卸値が高く、じつは儲からないのだが、これを置かないと客が寄りつかない」とはある店主。この御三家で売上高は200億円を超えるというのが関係者の推測。北海道の土産物全体の売り上げはどれくらいあるのか。「第4回北海道観光産業経済効果調査」によると、道内の観光消費のうち、買い物関係は3,551億円。その半額くらいが土産物に使われるというから、北海道の土産物市場は1,700億円前後と推計できる。たった3つの商品で土産物全体の1割以上を売り上げていることになる、お化けのような商品である。

今回の事件を受けて、北海道内の売店や百貨店では同社の全商品を撤去する動きが広がっています。今年の夏は、帰省土産として「白い恋人」が配られることもないでしょう。なお、北海道御三家の商品の人気は、日本国内には留まりません。情報源は、『北海道の「底力」-価格競争を超えブランド戦略へ-コメからスイーツまで北海道食材の快進撃』(週刊東洋経済 2006年10月21日 112~115ページ)です。

新千歳空港の出発ロビー2階にある土産物店街。台湾などからの観光客が「白い恋人」や「マルセイバターサンド」といった銘菓をケース単位でまとめ買いする光景は珍しいものではなくなった。「昨年は愛知万博にお客が流れたが、空港での売れ行きも今年6月以降は前年比プラス」(ナシオの巣守隆志・観光営業部長)。押し上げ要因の一部が、東アジアからの旅行客の増加だ。

いまや世界的ブランドとなった「白い恋人」を開発したのが、石屋製菓のアイデアマン社長・石水勲氏です。情報源は、『北の国の白い恋人(1)石屋製菓社長石水勲氏――菓子はネーミングが命』(日経産業新聞 2007年8月2日 26面)です。

「白い恋人」。札幌市の石屋製菓が製造するチョコレート菓子は北海道限定販売にもかかわらず、全国的に知名度が高い。強いブランドを育て上げたのが二代目社長の石水勲氏。活動は会社の枠を越えて広がり、道内初のプロサッカーチーム「コンサドーレ札幌」の発足に際してはスポンサーに名乗りをあげた。

石屋製菓の2007年4月期の連結売上高は前の期に比べ12%増の92億円と堅調だった。売り上げ全体のうち8割強を「白い恋人」が稼ぎ出した。この菓子が、例えば「冬将軍」という名前だったとしたら、ここまで主力の商品に育ったかは疑問だ。菓子はネーミングが命だと痛感している。

父の幸安が1947年に札幌市内で創業した石屋製菓は、もともと政府委託ででんぷん加工工場を運営していた。その後、水あめやドロップなど駄菓子の製造が主力になった。札幌市内の高校を卒業して東洋大学に進学した時は経営は順調だったが、卒業後の1967年に父との約束を守り札幌に戻って会社に入ると、既に経営は傾いていた。

最盛期に住み込み社員だけで30人程度いたが、私が入社した時は父母のほかパート女性が2,3人しか残っていなかった。時代は高度成長の真っ盛りで、消費者は徐々にシュークリームやバタークリームのケーキなど洋菓子を口にするようになっていた。

一生懸命作った菓子を問屋に卸していたが、以前は一袋100円だったのに、50円や40円でないと買ってもらえない。買いたたかれた上に、十袋に三袋おまけをつける「おとみさん」にしないと取引してもらえないこともあった。

ここまで悲惨な状況になると、「うちの会社のお菓子なんて世の中になくても良いんだな」と考え始める。そうなると、コストを抑えるために最低品質の小麦や古くなったタマゴを使おうと考えても不思議ではない。実際にそんな材料は使わなかったが、そこまで追い詰められるほど、自分と会社に対しいらだっていた。

ブランド力のないジェネリック製品の問題を解決するために、独自開発の製品開発に転換していく経緯は、近年ブランド品で成功した豆腐業界に共通しています(スーパー隷属体質からの脱却に成功した豆腐ブランド 三代目茂蔵、男前豆腐篠崎屋傘下に入った三和豆友食品と絶縁した男前豆腐店の今後の展開)。しかし「白い恋人」のブランド力も、今回の事件によって大きく毀損されることは間違いないでしょう。生活必需品ではなく、贈答品需要が主体な製品であるだけに、イメージの悪化は命取りとなる可能性も否定できません。

さらにこの新聞記事の中で気になったのが、「コストを抑えるために最低品質の小麦や古くなったタマゴを使おうと考えても不思議ではない。」という下りです。この記事が掲載された1ヶ月前は、同じ北海道にあるミートホープ社による原材料偽装事件が騒がれていました。石水勲社長は、ミートホープ社の事件を念頭に置きつつ、石屋製菓では苦しい時でも安全な原材料を使用してきた点を強調する目的で、当時の心境を吐露したつもりなのでしょう。

今回の不祥事を発表した記者会見では、「白い恋人」の賞味期限偽装は担当取締役の支持の下で行われた工作であることを明らかされているので、いわゆる組織ぐるみの偽装ということになります。「古くなったタマゴを使おうと考えても不思議ではない」の社長の言葉を、事件後に読み返してみると、本音ではあったとしても不謹慎な印象を与えます。社長自身の関与がないにせよ、原材料に対する管理意識の低さをトップ自身が認めているようにも理解できます。

なお、石屋製菓は「コンサドーレ札幌」だけでなく、フランス二部リーグのグルノーブル(GF38)のオフィシャルパートナーでもあります。同社がスポンサーとなった理由も、「白い恋人」に関係しています。「白い恋人」のネーミングが、1968年にグルノーブルで行われた冬季オリンピックの記録映画「白い恋人たち」に由来しているからです。

このグルノーブルのオーナー企業は、携帯電話事業を営む日本のインデックスですが、不振な海外事業の影響を受けて同社の業績も芳しくありません。グルノーブルにレンタル移籍していた梅崎司選手も、思うように活躍できずに古巣の大分トリニータに復帰しました。なんとなくグルノーブルという名前に縁起悪さを感じてしまう今日この頃です。


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