47歳にもなったクロネコヤマトの御曹司小倉康嗣専務がMBA留学?
2007年09月06日
先月27日発表されたクロネコヤマトの役員人事に、違和感を覚えたのは私だけでしょうか? 情報源は、『ヤマトHD、小倉専務執行役員が留学――創業家、米で経営学学ぶ』(日経産業新聞 2007年8月27日 23面)です。
ヤマトホールディングス(HD)は24日、創業家の小倉康嗣専務執行役員(47)が9月1日付で社長付となり、海外留学すると発表した。米国で経営学を学び、グループの弱点とされる海外戦略の強化につなげるのが目的と同社は説明している。経営学修士(MBA)の取得を視野に入れており、期間は一年以上の見込みという。
小倉氏は旧運輸省や旧郵政省を相手に規制緩和を強く主張し、ヤマト運輸を宅配便最大手に育てた故昌男氏の長男。2005年11月に持ち株会社ヤマトHDの事業子会社となったヤマト運輸の社長に就任した。07年3月にヤマトHDの専務執行役員に転じ、社長補佐としてグループ全体を統括する立場となったばかりだった。
ヤマトHDは主力の国内宅配便事業の成長鈍化が予想され、企業物流や海外事業の育成を迫られている。同社は「現在も課題を抱えているが、長期的な経営を考えて留学することになった」と説明するが、現職幹部が留学で一年以上もポストを離れるのは異例だ。
一部上場企業の専務取締役で次期社長候補と目された重要人物が、海外留学のために1年以上もビジネスの現場を離れるとは、にわかに信じがたい話です。確かに最近のBusinessWeekの記事でも、米国でMBA人気が急騰していると伝えられています。だとしてもMBAは、47歳の現役の企業幹部が長期間社業を犠牲にしてまで入学するほど価値があるものだとは、到底思えません。20代の若者が現在の小倉康嗣年齢になったら、悠々自適にリタイヤできるようなキャリアを作るために入学するのが、そもそもMBAなのではないでしょうか?
しかしながら、現役の企業幹部がビジネススクールで学ぶ必要がまったくない、と言うつもりもありません。受け側のビジネススクールの方でもこうしたニーズに対応すべく、MBAとは別に企業幹部向けのプログラム(Executive Education)を用意しています。日本でも履修者が多いのハーバードビジネススクールのAMP(Advanced Management Program)もその1つです。現役企業幹部向けのプログラムなので、履修期間もせいぜい2~3ヶ月というのが相場で、1年間の休職も必要ありません。
ところでMBA取得を目的とした小倉氏の人事に違和感を感じたのは、私だけではありませんでした。今週発売の週刊東洋経済がその真相に迫っています。情報源は、『ヤマト創業家失脚か? 小倉Jr.が海外留学へ』(週刊東洋経済 200年9月8日 17~18ページ)です。
「宅急便」を生んだ故小倉昌男氏の長男で、一時は社長候補と目されていた小倉康嗣ヤマトホールディングス(ヤマトHD)専務執行役員(47)が9月1日付で社長付に異動した。子会社の役員も多く兼任していたが、この数週間ですべて辞任した。
その名目は海外留学。会社側の説明では、米国の大学院で1年以上かけてMBA(経営学修士)を取得し、国際感覚を身につけるためという。主力の宅急便が成熟化する中、次の成長分野と見据えるのは海外事業。そこで、柱となる人材を育成する必要があるというのが大義名分だ。
が、今春以降、康嗣氏は重要ポストから遠ざけられてきた。ヤマト運輸社長の座を離れ、ヤマトHDの専務執行役員に異動となったのだ。兼任していたヤマトHDの取締役を外され、中核子会社の社長の座も追われた格好だった。
肩書の変遷を見れば、明らかな降格人事。海外留学となると、さらに日本国内からも追われる形だ。あるアナリストは「社長時代に実績を残せなかった」と指摘。また、グループ関係者は「頭は切れるし、指示も明確。だが、現場タイプではない。人間くさいヤマトの社風になじめなかったのでは」と人物評を語る。
要するに、社長の器にあらずと判断された二代目御曹司を、あからさまに放逐してしまうのは波風が立つので、海外留学という口実を使ったというのが、真相のようです。東洋経済の記事にあるように「頭が切れるが、現場向きでない」と評されている人物が、所詮机上での分析が中心のMBAを取得することは、むしろ逆効果にも思えるので、あまり上手な口実とも言えませんが...。
次期社長候補と目されていた御曹司が、突然現在のポストを離れる場合に、海外での勉強を口実に使うのは、決して珍しいことではありません。イトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊氏の長男伊藤裕久氏も専務の地位にあった49歳の時に、突然ヨーカ堂を退社しています。退任の理由は、米国でITを勉強したいという本人の希望に沿った結果ということになっていました(ダイエー再建スポンサーにイオンが選ばれた場合の政治的影響は推測不能)。ヨーカ堂を退職した伊藤ジュニアが、本当に米国でITを学んでいるのかどうかは、知るよしもありません。
不祥事を起こした政治家が突然入院して雲隠れするように、2代目経営者が海外留学という口実で社業を離れるのは、ビジネス界の常套手段となったのでしょうか? 小倉氏がもし本当に海外留学する場合は、関連費用を会社が負担する社費留学扱いになるのでしょうか?
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