先週メディアを席巻した話題が、GoogleによるYouTubeの買収でした。設立わずか2年たらずの会社が、株式交換という形にせよ、16億5,000万ドル(約1,965億円)に大化けしたのです。これに関連した話題として、Googleからの3,000万ドルでの買収の提案を断った企業が存在することを見つけました。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の先駆けとされるFriendsterが、その会社です。情報源は、グーグルのオファーを断り、10億ドルをつかみそこねた男の話です。
Friendsterが生まれたのは2002年。NetscapeのエンジニアだったJonathan Abramsという人物が、もともとは失恋の痛手にバネにして、出会い系サービスをつくるという着想を得て始めたものだったという。
Friendsterの創業時にシードマネーの一部を提供したMark J. Pincusという人物が、「簡単にいうと、Jonathanは女の子と知り合いたかったんだ。・・・友達のアドレスブックをブラウズして、ルックスの良い女の子を見つける手段としてFriendsterを始めたと、Jonathanが言うのを聞いたことがある」とコメントしているのが面白い。
根は創業者のスケベ心にあるとはいえ、企業の目的は自分が欲しいサービスを作りたかったのが、起業の理由です。IPOや事業売却による金儲けではないと考えれば、当初の目的は極めて純粋だったわけです。
実際にサービスが始まったのは2003年3月だったが、Friendsterはその後急激にユーザー数を増やしていく。ヴァイラル(口伝え)の力にうまく乗っかったおかげで、マーケティングにはお金をまったく使わなかったにもかかわらず、ユーザー数は約半年で300万人に達した。
Time、 Esquire、Vanity Fair、 Entertainment Weekly、US Weeklyといった有力な新聞・雑誌がFriendsterのことを取り上げ、創業者のAbramsは有名なテレビのトーク番組にまでゲスト出演した(この出演後、Abramsは「Yahoo!の2人の創業者だって、まだ深夜のトーク番組に出たことはない」と自慢していたという)。
マスコミに大きく取りあげられたことにより、一躍セレブの仲間入りを果たした創業者のAbramsは、女性には不自由しない身分になりました。この点では、本来の起業の目的は達成されたのかもしれません。こうして注目を集め始めたFriendsterに対して、Googleが3,000万ドルでの買収オファーを持ちかけます。
このオファーには、3000万ドルの評価という点のほかにも、ある特別な魅力があった。それは、自分のつくったサービスが何千万もの人々の目に触れるという可能性だ(金銭面についていえば、Googleがこの後2004年に株式を公開し、その株価がわずかな間に4倍以上に跳ね上がったことから、仮にAbramsがこの時オファーを受け入れてGoogle株を手にしていれば、いまでは10億ドルを超える資産の持ち主になっている計算になるそうだ)。
当時の3,000万ドルのGoogle株式が、いまでは30倍になって10億ドルの価値があるというのは、あくまでも計算上の話です。もちろん3,000万ドルとして考えても、生まれて1年の企業につく値段としては、破格な金額であることには変わりません。いずれにせよ、Abramsはこの申し出を断ります。将来FriendsterをIPOすることによって、一攫千金を目論んだベンチャーキャピタリスト(VC)の強い働きかけがあったからです。
Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)のJohn Doerrをはじめとする、シリコンバレーのVCが、Googleへの売却を思いとどまらせるべく、「株式の一部と引き替えに資金を提供し、また援助もするから、Friendsterを数億ドルもの価値を持つ有力オンラインサービスにしていこう」とAbramsに働きかけた。
「Yahooの創業者らも AOLからのオファーを断ったから、後に(株式公開して)成功した。Microsoftのオファーを断ったGoogleにしても同様。オレたちが面倒を見るから、でっかい会社にしよう」といったところだろう。そして、Abramsのほうもあまり逡巡せずに「独自路線」を選択する決断を下した。
資金提供をしたVCは、Abramsに代わって新たなCEOをFriendsterに就任させます。しかし、新CEOは思った成果を上げられず、その後わずか12ヶ月間で3度のCEOが交代する事態を迎え、同社のマネジメントは混乱を極めます。技術面でもユーザ数の増加に伴うパフォーマンスの悪化、新機能の追加に失敗するなど、Friendsterは急速に当初の輝きを失っていきます。