以前の投稿で、MBAホルダーを挑発するようなタイトルの書籍『MBAが会社を滅ぼす』のことを紹介しました(1,500万円もかかる米国MBA留学を決断する前に読むべきミンツバーグ)。著者は、『戦略サファリ』、『マネジャーの仕事』等の経営学の名著を書いたヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)、マギル大学教授です。教授は本書の中で、「業績不振の米国企業のエグゼクティブでMBA取得者の比率は90%」といったデータを示しながら、もはや従来型のMBAは時代遅れであるとの主張を展開しています。
マギル教授の指摘を実践したわけではないでしょうが、一昔前に比べると海外のMBAを取得する日本人留学生の数にも、減少傾向が見られます。1990年代の日本では、まさに「海外MBAバブル」と呼ぶに相応しい現象が起こっていました。1991年にペンシルバニア大ウォートン校に留学した本荘修二ジェネラル・アトランティック日本代表は、その頃の状況をこう振り返っています。情報源は、『本当に強い大学 2006-減少する海外MBA、増加する国内MBA-MBAブームの今』(週刊東洋経済 2006年10月14日 64~69ページ)です。
「当時はバブル直後で金融機関からの派遣の数がすごかった。800人中30数人が日本人。その多くは、ほとんど英語を使わずにゴルフばかりしていて、勉強をしっかりしていたのは少数派だった」
その後、日本ブームが去ると全盛期には年間400~600人に上った米国トップ20以上のスクールへの留学生は激減。現在、その数は160人程度まで減ったという。「02年ごろが海外MBA留学者数のピークで、今は当時に比べ10%減くらい」とMBA留学予備校ザ・プリンストン・レビュー・オブ・ジャパンの横山匡会長は言う。
東洋経済の記事では、日本人留学生が減少した理由として次の3つを挙げています。
1つ目が、会社派遣の減少だ。90年代前半は留学生の9割が派遣という年もあったが、現在は50%程度にまで低下。MBA取得後に派遣先の企業を辞める卒業生が続出したこともあり一部企業は派遣枠を絞った。特に、メガバンクの合併により、金融業界からの派遣が減少した。
2つ目の要因が、中国、インド、韓国からの受験者の増加だ。とりわけ中国からの受験者数増加はすさまじく、「ハーバードでも中国からの受験生が相当増えている」と江川雅子ハーバード・ビジネス・スクール日本リサーチセンター長は語る。
そして3つ目が国内MBAの台頭。昨年よりMBAプログラムを開始したグロービス経営大学院の鈴木健一事務局長は、「MOT(技術経営)を含めた広義のMBAホルダーは毎年3,000人くらい生まれているのではないか」と推測する。70年代の慶應大、国際大、神戸大らを皮切りに、専門職大学院制度施行が契機となって03年以降MBAプログラムが急増。その影響を受け、「トップ20以下のスクールを狙う層が国内MBAに流れている」(横山会長)。
海外校に代わって国内MBAが人気化した理由の1つは、まずその費用の安さです。国立大学ならば1年間の学費は50万円程度で済みます。慶應、早稲田などの有力私立校の場合は200万円に増えますが、それでもハーバードの400万円の半額に収まるので、その差は無視することはできません。
国内MBA校が人気化した2つ目の理由は、内容面でも国内MBA校が海外MBA校に急速にキャッチアップしてきたことにあります。今では、海外校と比べても遜色のないカリキュラムを提供できる国内校も、少なくないようです。
グローバル企業で働くのでなければ、海外企業の事例を英語で学ぶより、日本企業の事例を日本語で学んだほうが役に立つ。人脈という点でも、仕事に直結しやすいといえる。
キャリアの点でも、「米国トップ30のスクールよりも一橋大のほうが価値が高い」(横山氏)。実際、編集部が国内主要企業25社に行ったアンケートでも、商社など海外との交渉が必要な会社を除けば、「海外と国内のMBAは同じ評価」と答える企業が約4分の3を占めた。
サッカーの日本代表選手のように、MBAホルダーを「海外組対国内組」といった基準で区別することは、もはや意味を持たないことなのでしょうか? しかし、すべての国内MBA校が高い評価を受けているわけではないことも、また事実です。雨後のタケノコのように増殖した国内MBA校の中には、すでに厳しい評価を受けているところもあり、国内組内部で二極化が進行しています。
『国内MBAスクールガイド』などの著書がある国内MBA専門予備校ウィンドミル・エデュケイションズの飯野一代表取締役は「これから国内MBAの淘汰が始まる可能性が高い」と言う。その理由は明確。
「関東では慶應、一橋、早稲田、関西では神戸などの人気校を除けば、多くの大学が定員割れ。1カ月間準備すれば、ほとんど誰でも合格できる」からだ。つまり、供給(学校)の拡大に、需要(生徒)が追いついていないのだ。
2007年に訪れると言われている大学全入時代より一年前倒しで、選り好みさえしなければ誰でも入学できる「MBA全入時代」が実現しているのです。したがって、国内MBAの場合では「どこの」学校を選ぶかが、極めて重要な選択になってきます。